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「なぜ球磨川は氾濫したのか?」
ランナーが問う現代土木の落とし穴。

posted2020/08/25 17:05

 
「なぜ球磨川は氾濫したのか?」ランナーが問う現代土木の落とし穴。<Number Web> photograph by Yusuke Yoshida

熊本豪雨で被害の大きかった八代市坂本地区で、ボランティア活動を続ける「チームドラゴン」の面々。

text by

山田洋

山田洋Hiroshi Yamada

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photograph by

Yusuke Yoshida

 7月4日。熊本県南部を流れる球磨川流域を襲った大雨は『令和2年7月熊本県・鹿児島県豪雨災害』として、甚大な被害をもたらした。

 前編では豪雨の直後に、山道を使って被災地に入ったトレイルランナー吉田諭祐さんの活躍を紹介した。この後編では、現在もボランティア活動を行う吉田さんが、被災地で感じていることを掘り下げていく。

“山ルート”を使って被災地入りしてから1週間後の7月12日。吉田さんら「やっちろドラゴントレイル」のレース実行委員会は、年間15回の整備活動で培ったトレイルランナーのネットワークを活かし、ボランティア組織『チームドラゴン』を結成・活動をスタートさせた。

「確かにトレイルは無事だったわけですが、地域住民と作り上げる大会はすぐに中止にしました。私たちはトレイルレースをきっかけに、地域のことや環境のことを広く知ってもらうことを理念にしていて、トレイルランナーに声をかけると、賛同の輪が広がったんです」

 引き続きの大雨で国道がさらに崩落したため、かなり遠まわりする迂回路を経て現地入りした『チームドラゴン』は、地域のシンボル的な存在でもある鶴之湯旅館をボランティア拠点にするため、地下室と1階の瓦礫を撤去し、泥のかき出しをスタートさせた。

「初回の活動に参加してくれたトレイルランナーは26名でした。体力だけは自信があるトレイルランナーにとっても初めてのことばかりで、まだ重機が入れないこともあり、まさに手探りの人海戦術でした」

まさにトレイルランニングの精神。

 復旧作業に当たった地元土木業者によって、坂本地区まで大型車両が入ることができるようになるまで、移動を含めて自己完結が必要なボランティア活動では、機動力に富んだトレイルランナーの特性がフルに発揮された。

「一緒に泥かきをしていた地元の方との会話なんですが、被災地入りする交通手段、自らの飲食と補給、ゴミは持ち帰り、弱音をはかず、目の前の仕事に黙々と邁進する姿勢に驚いていました。でも、特別なことではない。トレイルランニングの精神そのものというか、みんな当たり前のようにしていました」

 もちろんスポーツであるトレイルランニングと被災地ボランティアは勝手が違う面もある。破傷風に気をつけるため、シューズには瓦礫の踏み抜き防止のインソールを仕込むということも、現場で教わったという。ましてやコロナ禍の中、“3密”にも気を配る必要があった。

「まさに手探りでしたね」

【次ページ】 ラガーマンたちの「筋肉が刺激されるぜ!」。

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