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タカマツが歩んだ13年と偉大な功績。
“余った”2人が世界で一番になった。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byItaru Chiba
posted2020/08/20 19:00
現役引退を表明した高橋礼華(右)。3月の全英オープンが“タカマツ”のラストマッチとなった。
13年間ペアを組んだ松友への想い。
今回の引退に際し、真っ先に自分の意思を伝えたのは、もちろん、ペアを組む松友だった。宮城・聖ウルスラ学院英智高校時代から13年間にわたりペアを組んできたコンビネーションは世界でもトップクラスの「誰にも負けない」(高橋)強みだった。そんな絶妙のコンビネーションをともに作り上げた“相棒”に対する思いを口にすると、自然と涙が溢れた。
「もともと私はシングルスをやっていましたが、まさか13年間も、そしてダブルスでここまで来られるなんて正直想像していませんでした。今でも笑って話をするんですが、先生(高校時代の恩師・田所光男氏)は『余りものだから組ませた』って(笑)。でも、その余りものがオリンピックで一番いい成績を取れるまでになった。こうしていろいろな経験を積むことができたのも松友と組んでいたからこそ。シングルスを続けていたり、もしもほかの選手とペアを組んでいたら絶対に成し遂げられなかったと思います。うれしいことや楽しいことの方が少なかったですが、どんなことも2人だから乗り越えられたと私は思っています。だから、(松友には)今まで組んでくれて本当にありがとうという感謝の気持ちでいっぱいです」
一方の松友も「高橋先輩、長い間、おつかれさまでした。先輩とでなければ本当にここまでやってくることもできなかったですし、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と涙ながらに言葉を紡いだ。
相棒・松友は新たな挑戦へ。
高橋は引退、一方の松友は現役を続行し、今後は混合ダブルスで新たな挑戦を始める。
2人が同じコートで戦う姿が今後はもう見られないと思うと寂しい限りだが、2人が残した功績はオリンピックでの金メダル、スーパーシリーズ優勝、世界ランキング1位など、数々の日本人初という記録以上に大きい。
また、そうした記録以上に、“タカマツ”ペアが日本バドミントン界や後進に与えた希望や可能性は計り知れない。彼女たちが真摯に挑んできた姿や戦いの日々の記憶はいつまでも色褪せることはない。
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