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タカマツが歩んだ13年と偉大な功績。
“余った”2人が世界で一番になった。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byItaru Chiba
posted2020/08/20 19:00
現役引退を表明した高橋礼華(右)。3月の全英オープンが“タカマツ”のラストマッチとなった。
「気持ちを継続できるか不安でした」
もちろん、やろうと思えばまだできる。体力的にも精神的にもまだ限界には達していない。それでも引退を決断したのは、自身が決めたことはとことん貫くという性格ゆえに、覚悟を持って戦いに臨めるのか、そこに確固たる自信が持てなかったからだ。
「あと1年モチベーションを保ち続けられるのか、来年、いいパフォーマンスが出せるのか不安でした。自分のなかでやると決めた以上は、(目指すものは)金メダル以上のものはなかったので。そこであと1年と考えたときに気持ちを継続できるか不安でした。もともと中途半端なことが嫌で、練習や気持ちの持って行き方など、それが少しずれるだけでも、私の中では違うなって思ってしまうので」
だからこそ、東京五輪を前に現役を退くことにはなったが、「ここでやめることに悔いはない」ときっぱり言い切る。「もうちょっと応援したかったなと言ってくださる方もいると思うのですが、これまでたくさんの方々に応援していただいて、すごく幸せな現役生活だったなと思います」
鮮明に記憶されるリオ五輪の激闘。
引退発表会見を行った8月19日は、くしくも4年前にリオ五輪でタカマツが日本バドミントン界に初のオリンピック金メダルをもたらした記念日だった。
逆転勝利を収めた決勝での激闘は4年経った今でも鮮明に思い出される。
予選リーグから決勝まで危なげなく勝ち上がってきたタカマツは、デンマークの長身ペア、カミラ・リターユヒル、クリスティナ・ペデルセン組と対戦し、第1ゲームを18-21と落とした。第2ゲームを21-9で奪って流れを取り戻すと、ファイナルゲームは最終盤で16-19とリードされ、まさに崖っぷちへと追い込まれた。
しかしここから怒涛の反撃を見せ、最後は圧巻の5連続ポイント。21-19で勝利し、ペア結成10年目にしてオリンピックの頂点に立った。