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新人王戦はボクシング界の希望だ。
4回戦選手たちを救った協会の英断。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byKyodo News

posted2020/08/23 20:00

新人王戦はボクシング界の希望だ。4回戦選手たちを救った協会の英断。<Number Web> photograph by Kyodo News

中日本地区の新人王戦予選の様子。無観客ではあっても、選手たちは試合の機会を心から欲していた。

出費は巨大でも理事会はGO。

 JPBAの林隆治事務局長補佐は、協会の熱意を次のように説明する。

「協会主催で無観客での試合となれば、かなりの出費が見込まれます。理事会ではそのあたりの説明も十分しましたが、反対意見はほとんどなかった。それだけ新人王を開催したい、という思いは協会員の間でも強かったと思います」

 コロナによる制約がある中で興行を開催する場合、選手のファイトマネー(6万円)、会場費、日本ボクシングコミッションへの承認料、コロナ対策費(PCR検査費、計量後に選手をホテルに隔離する宿泊費など)などすべてを合わせると、1回の興行で250万円程度の経費が必要になる。

 観客が入らなければ収入はほとんどないので、これをすべて東日本協会が持つことになる(会場が後楽園ホールの場合)。

 東日本協会は7、8月に無観客の新人王戦を3回開催。9月以降は観客を入れるとはいえ、入場者の制限や会場スタッフの増加を考えると、赤字額が大幅に改善されることはないという。

別会計でためてきたお金を切り崩して。

 それでも東日本協会が新人王を開催できるのは、長年にわたって新人王を別会計とし、コツコツとお金をためてきたからだ。伝統ある大会を守るため、何より4回戦選手の活躍の場を絶やさないためにも、先達の汗と血と涙によって残された資金をありがたく切り崩し、無観客での新人王戦開催にこぎつけたというわけだ。

 各ジムにとっても勝ちさえすれば、自動的に次の試合が決まるトーナメントは、マッチメークの手間が省けるという意味でもありがたい存在なのである。

【次ページ】 中止なら引退者も増えていた可能性が。

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