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大橋ジムのホープ2人がデビュー勝利。
アマのプロ転向が続く理由は?
posted2020/08/26 11:40
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
大橋ジム期待のホープ、松本圭佑と中垣龍汰朗が24日、後楽園ホールでデビュー戦を飾った。ともに小学生時代から全国大会で名を馳せ、昨年暮れに東京農大を2年生で中退してのプロ入り。高い志を胸に抱く若武者が目標とする世界チャンピオンに向かって第一歩を踏み出した。
先に登場したのはサウスポーの中垣。宮崎・日章学園高で全国大会に5度優勝、国際大会で3度優勝という輝かしい実績を残している。試合は対戦相手の堀井翔平(トコナメ)をまったく寄せ付けず、2回2分2秒TKO勝ちを収めた。
スピード感あふれる動きが印象的だったが、試合後の本人のコメントは「ゆっくりとしたリズムでやりながら、距離感を保つことを意識して、それがはまったんでよかった」というもの。ゆっくりやっているようには見えなかったのでちょっと驚いた。
アマチュアの3ラウンドと違ってこの日は6ラウンド。世界戦は12ラウンドだから、プロ仕様のペース配分を考えてのことだろう。いずれにしても瞬間的なスピードの速さが中垣の大きな武器と感じさせるデビュー戦だった。
開始20秒、人生初のダウン。
続いて登場した松本はアマチュア実績では中垣に劣るものの、注目度という点では中垣よりも上だった。祖父の弘さんが元プロボクサーで、元日本、東洋太平洋フェザー級王者の父、好二さんは3度の世界挑戦経験を持つが世界王者になることは叶わず、現在は大橋ジムのトレーナーを務めている。
松本は小学生時代から全国大会でたびたび優勝を飾り、テレビ番組が松本の成長を追いかけるなど、知る人ぞ知る存在だ。そんな松本が父のはたせなかった世界チャンピオンという夢をかなえるべく、デビュー戦のリングに上がった。
試合は中垣と違って波乱。松本が快調に滑り出したかに見えた開始20秒、プロ20戦(9勝1KO9敗2分)の三宅寛典(ビッグアーム)が右カウンターをたたき込み、松本は人生初のダウンを喫してしまったのだ。好二トレーナーは試合後、「心臓が止まるかと思った」と振り返ったが、決して大げさな表現ではなかったろう。