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新人王戦はボクシング界の希望だ。
4回戦選手たちを救った協会の英断。
posted2020/08/23 20:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kyodo News
世界に類を見ない日本ボクシング界の伝統のトーナメント、4回戦選手による新人王戦がプロボクシング興行の再開とともに開幕した。
今年で67回の歴史を重ねる新人王戦は国内のプロボクシングの土台とも言える大事な大会だ。新人王戦に意義について考えてみたい。
日本プロボクシング協会(JPBA)が主催する新人王戦は、東日本(北日本を含む)、中日本、西日本、西部日本の4地区に分かれて4回戦選手がトーナメントを行い、最後は勝ち上がった東軍代表(東日本)と西軍代表(中、西、西部日本)が後楽園ホールで激突してその年の全日本新人王を決める――という大会だ。
ただのルーキーズトーナメントと侮ることなかれ。このトーナメントで全日本新人王に輝き、のちに世界チャンピオンになった選手はファイティング原田を筆頭に、ガッツ石松、竹原慎二、畑山隆則、内藤大助……と、ここに名前を挙げきれないほどたくさんいる。
新人王戦が昔も今も“チャンピオンの登竜門”と呼ばれるのはそのためだ。東日本の決勝、全日本新人王決定戦ともなれば、その盛り上がりは日本タイトルマッチをしのぐほどである。
7月に開幕できなければ見送りだった。
その新人王戦が今年、新型コロナウイルスの影響で3月にすべての国内興行が中断されると、開催が危ぶまれる事態に直面した。
新人王戦はトーナメントのため、通常であれば3月下旬ごろに開幕し、12月の全日本新人王決定戦でフィナーレを迎える。業界はコロナショックを受けて会期を来年2月まで伸ばしたが、それでもギリギリで7月中に開幕しなければ日程を消化できない。それができなければ今年の新人王は見送りだ。
こうした状況で7月の興行再開のめどが立ち、7月12日の中日本新人王、同月30日の東日本新人王の開幕にこぎつけたのである。