球体とリズムBACK NUMBER
「目指しているのはもっともっと上」
湘南・鈴木冬一、20歳の焦燥とは。
posted2020/08/13 11:40
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
J.LEAGUE
最下位に沈む湘南ベルマーレにも、光明はある。その最たる存在のひとりが、高卒2年目の左ウイングバック、鈴木冬一だ。
165センチの小柄ながら、バネのある強い身体に優れた運動能力と技術を兼備。特別な左足から鋭い球を蹴り、急展開と急発進で相手を幻惑する。野性味、そしてストリートの匂い──フットボールタームとしての──もする大阪出身の20歳だ。
ずいぶん前のことに感じられる2月下旬の浦和レッズとの今季開幕戦で2アシストを記録し、再開後の第3節横浜F・マリノス戦ではJ1初得点をマーク。どちらもシーソーゲームとなり、残念ながら最後は2-3と競り負けたけれど、その存在感は際立っていた。
8月最初の週末には、ユース時代を過ごしたセレッソ大阪との一戦にもフル出場。だがまたしても、鈴木と湘南は黒星を喫した。今季は新型コロナウイルスの影響で降格がなくなったとはいえ、最下位は不甲斐ない。問題はどこにあるのだろうか。
「まだ模索中みたいな感じで」
「正直、いまはちょっと自分たちでもわからないんです。こうしようという話も出ていますけど、まだ模索中みたいな感じで」
セレッソ戦後の平日午後に時間をつくってくれた鈴木は、画面越しにそう正直に話した。ただ本人は「(古巣を相手に)そわそわした」セレッソ戦でも、危険なクロスを放ったり、急激なターンや重心の低いドリブルを見せたりした。
これを書いている時点でアシスト、クロス、ドリブル、パスレシーブ、シュートの数でチームトップ(データスタジアムより)。数字に表れないところでは、マークされていても積極的にボールを受け、工夫のあるファーストタッチで相手と入れ替わって局面を打開したり、敵の最終ラインと駆け引きをして裏を狙ったりする。
「動き出しは不得意ではないし、出し手と(意思が)つながれば、一気にチャンスになるので常に狙っています。ボールキープにも自信はあるし、マークに来た相手を剥がす自信もある。マークされていても、(自分にボールを)預けてほしいと思っています」