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2本のベルトはEVILに貸してただけ!?
内藤哲也、神宮球場でタイトル奪還へ。
posted2020/07/28 20:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
EsseiHara
「カネ返せ!」という1人の男の怒号。それに、2人目の男の「カネ返せ!」という大声が続いた。そんな言葉は昭和の時代のものであって、もう新日本プロレスでは死語だと思っていた。
ましてやこの新型コロナ禍で、大声を出さない静かな観戦ルールが繰り返しアナウンスされている中においては、特別の響きに感じられた。
7月25日、愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)。十分にソーシャルディスタンスを取った結果の観客は2200人(札止め)。メインイベントでは悪のIWGP王者EVILの2冠に高橋ヒロムが挑んでいた。
ヒロムはEVILの嵐のようなジャーマンスープレックスの5連発地獄にも耐えて、得意技でもう一歩のところまでEVILを追い詰めていた。だが……予期されたことではあったが、セコンドについていたEVILの相棒ディック東郷の度重なる乱入と助太刀は酷かった。その暴虐の果てに、レフェリーまで場外に引きずり出されてしまった。
結局ヒロムはジュニアヘビーに戻ることに。
「カネ返せ!」と言うほど、33分57秒の試合そのものの内容が悪かったわけではない。だが、「試合をちゃんと見たいんだ」という希望が、この「カネ返せ!」という品のない言葉の裏に隠されていることは忘れてはいけない。
ヒロムは東郷にワイアーで締め上げられて、EVILにフォールを奪われた。
ヒロムのIWGPジュニアヘビー級王者のまま、IWGPヘビーのベルトを巻くという願いはかなわなかった。さらには石森太二の襲撃にもあって、ヒロムはジュニアヘビーの戦いに引きずり戻されることになった。
そんな場面に現れたのが、内藤哲也だった。