マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
日大藤沢・牧原巧汰はやはりいい。
高校No.1捕手が持つ2つの超一流。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byYoshiyuki Otomo
posted2020/08/05 07:00
高校生捕手がドラフト上位に入ることは少なく、それはつまり指名されたら期待が極めて大きいことの裏返しなのだ。
ボールの真ん中よりちょっと下を。
思い出した場面がある。
昨年の12月、取材でうかがった日大藤沢グラウンド。
牧原巧汰が繰り返すロングティー。よくある力任せの、飛距離欲しさのメチャ振りじゃない。右半身を止めたまま、後ろから前に長くバットヘッドを走らせてボールを振り抜いて、そこでポンとバットを止める感じ。顔はミートポイントを見つめたまま動かない。
あのメカニズムだ。
「ボールの"赤道部分”よりちょっと下を狙って、バットヘッドをグッと入れて、それで打球にバックスピンをかけるイメージで」
彼自身がそう語ってくれたそのまんまのメカニズムで振り抜いた打球だから、外野に行って、またグッと伸びたんだ。
ひと冬かけて、繰り返し自分の体に刷り込んだスイングをそのまま体現して、プロすらアッと声を上げる弾道にしてみせ、捕手としてもいちばん二塁送球しにくいコースのボールを絶妙の握り替えで解決するテクニックも健在だった。
私の中では、牧原が高校No.1。
2年春から注目していた日大藤沢・牧原巧汰捕手、その「3年夏の答え合わせ」は“90点”だ。
あとの10点は、タイミングの全く合っていない「9番・投手」にも、両サイド低めを突いて四球につなげてしまうような、マジメ過ぎる考え方だ。
「9番・投手」がそんな難しいボールに手を出すわけがない。「真ん中」を打ち損じてもらおう。打ってもらっても、「7割凡退」だ。
その小さな修正点を解決すれば100点が見えてくる。
全国に優秀な捕手は何人かいるが、私の中では、やはり「No.1」は西武・森友哉の高校時代が重なる打撃技術を持った、この捕手になる。