JリーグPRESSBACK NUMBER
井出遥也がヴェルディで必然の輝き。
2人の指導者が授けた緑のエッセンス。
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/27 11:30
ヴェルディ下部組織育ちではない井出遥也が、ヴェルディらしい技巧派として主力になっているのは興味深いところだ。
千葉を離れる際には多額のお金を。
2012年、井出は同期の佐藤祥とともに千葉のトップに昇格。U-18からの昇格者は、じつに4年ぶりのことだった。
クラブの一部からは「あんな子どもみたいな身体の選手をトップに上げて責任を取れるのか?」という声もあったが、菅澤は意に介さなかった。井出は3月25日の早生まれでもあって、身体ができてくるのはこれからだった。「必ずクラブに利益をもたらす選手になると確信していましたから。実際、ハルが千葉を離れる際は、育成費を含めて多額のお金を残しています」(菅澤)。
プロ入り後の2年間、井出は雌伏の時を過ごし、3年目から飛躍的に出場機会を増やしていく。新進気鋭の技巧派アタッカーは多くの人々が知るところとなり、当時はまだ現役だった永井秀樹(東京V監督)も強い興味を惹かれたひとりである。
ADVERTISEMENT
「後輩の富澤清太郎が千葉にいたんでね。あいつ、いい選手だなあとよく話していたんです。自分が監督になってから、強化部に対して真っ先に補強のリクエストを出しています」(永井)
「永井さんのサッカーがやりたくて」
井出は、2017年にガンバ大阪、2019年にモンテディオ山形へ移籍。今季から東京Vに加入した理由がここにある。
「永井さんのサッカーがやりたくて移籍を決めました。ボールを持ち、ゲームの主導権を握って攻撃を仕掛けていくスタイル。思えば、プロになって以降、自分が楽しさを感じるやり方でプレーできた時間はほとんどないんです。今年、親しい人からはやたらと表情が明るく、いつもうれしそうにしていると言われますね」(井出)
7月15日のJ2第5節、ヴァンフォーレ甲府戦では、井出の真骨頂と言えるゴールシーンが見られた。
東京Vの1点リードで迎えた66分、ボックス左角の付近でボールを持った井出は、鋭いカットインでマークをはがし、間髪入れず右足を一閃。強烈なミドルシュートをファーサイドのネットに突き刺した。結果、4-2で甲府を下し、東京Vの今季初勝利に貢献している。