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悪の王者EVILの相棒、ディック東郷。
ナマハゲからゲバラまでの“謎の50歳”。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/07/24 20:00
チェ・ゲバラをリスペクトするディック東郷らしいベレー帽姿。異国の地を渡り歩いてきた男は日本で革命を起こせるか?
新型コロナ禍のカオスから生まれた男・東郷。
そんな東郷にとって、かつて国内引退試合の相手をしてくれた外道が新日本のバレットクラブにいたのは、幸運だった。
新型コロナウィルスによる渡航制限で、ジェイ・ホワイト、バッドラック・ファレ、KENTAらは日本に戻って来られない。弱体化気味のバレットクラブのテコ入れに向けて、白羽の矢が東郷に立った。
先輩にあたる邪道、外道らとの悪のコネクションはまだ生きていた。“裏切り者”として再スタートをきるEVILの物語をより強化するために、旧知の東郷を引き入れるということで話がまとまったというのが、この流れの説明としては一番的を射ているだろう。実際、東郷は外道をリスぺクトしているし、外道も昔から東郷を高く評価してきていた。
約15年程前、外道らは“C.T.U(Control Terror Unit)”という獣神サンダー・ライガーらまで加わったジュニアヘビー級の悪のユニットで新日本を制圧したこともあったほどなのだ。東郷も短い期間ではあったがそこにいた。
東郷のサポートでIWGP王者EVILは生まれた。
7月12日の大阪城ホールでの、東郷の登場はセンセーショナルだった。
いきなり“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”のBUSHIのマスクをつけて乱入した東郷は、EVILと戦っていた内藤哲也をロープ越しにワイアーで締め上げた。
結果、内藤はIWGPヘビー級とインターコンチネンタルの2つの王座から引きずり降ろされて、EVILという悪のIWGP王者を生むことになった。
「1人ではどんなすばらしい理想も実現することはできない」
このゲバラの言葉も、強引にバレットクラブと東郷自身に当てはめることができる。