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マキロイを抜いてラームが世界一に。
荒れなくなったのは妻の影響も? 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2020/07/23 08:00

マキロイを抜いてラームが世界一に。荒れなくなったのは妻の影響も?<Number Web> photograph by AFLO

ジョン・ラームが以前のような不安定さを見せることは少なくなった。妻ケリーの影響も大きいのだろうか。

激昂して自滅していた若いころ。

 それまでのラームは、ミスをするたびに激昂し、クラブを地面に叩きつけたりして悪態を付くことが多かった。だが、昨春のプレーヤーズ選手権で自滅して以降、怒り狂って大暴れする姿は見られなくなった。

 先週のメモリアル・トーナメントで勝利を競い合ったライアン・パーマーは、昨年のチューリッヒ・クラシック・オブ・ニュー・オーリンズでラームとペアを組んで戦って勝利した同士だが、そのパーマーもラームの内面の変化に目を見張っていた。

「ジョンはずいぶん変わった。さまざまな経験、ケリーとの結婚、人間的成熟。何が彼を変えたのかはわからないが、ジョンは戦士に必要な熱く燃えたぎるものをちゃんと保ったまま、それらをコントロールできるようになっている。大変な努力の末の成長だと思う」

 メモリアル・トーナメント最終日、ウイニングパットを沈めた直後にマイクを向けられたラームは、インタビュアーから「16番は動いたボールをそのまま打ったということで、あなたに2罰打が科せられるそうです。それでもあなたが勝ったことに変わりはありませんけどね」と告げられ、不意打ちを食らったラームは「はあっ?」とあからさまに驚きと不快感を示した。

 しかし、なんとか感情を抑えてインタビューに対応し切り、以後も冷静さを保ち切り、「あの16番はバーディーがボギーになった最大最高のチップインになってしまったけど、ペナルティは受け入れます」と静かに語った。

荒れる癖は治ったのだろうか。

 知り合ったころ、ケリー嬢は「ジョンは怒ると部屋に閉じこもって、しばらく出てこない。壁や床を叩いたり蹴ったり。ガンガン音が聞こえてくる。数時間すると、『お腹空いた』と言って部屋から出てくるんだけど、それまでが大変なのよ」と言っていた。

 世界一になったこれからのラームは、もうそんなふうに部屋にこもって荒れることはないのだろうか。それとも、それが彼の熱いエネルギーの源なのだろうか。

 それは、愛妻ケリーですら判断できないのかもしれないが、世界一になるという少年時代の夢を弱冠25歳にして叶えたラームは、これからも「信じる人」「信じること」をとことん信じ、努力を重ねていくことだろう。

 そして彼は、どこに行き着くのか。それを見届けることが、あらたな楽しみになった。

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ジョン・ラーム

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