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マキロイを抜いてラームが世界一に。
荒れなくなったのは妻の影響も? 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2020/07/23 08:00

マキロイを抜いてラームが世界一に。荒れなくなったのは妻の影響も?<Number Web> photograph by AFLO

ジョン・ラームが以前のような不安定さを見せることは少なくなった。妻ケリーの影響も大きいのだろうか。

兄が予言した「1年以内にトップ5」。

 ラームの才能に惚れ込んだティムは、その後、大学ゴルフ部のコーチを辞め、プロ転向したラームのマネージャーになったほどの入れ込みようだった。ティムは現在は兄ミケルソンのバッグを担いでいるが、兄ミケルソンは、やはりラームの才能に目を丸くして、ラームがプロ転向した2016年当初から、こんな予言をしていた。

「ジョンは1年以内で世界のトップ5になる」

 その通り、ラームは2017年の夏に世界ランキングでトップ5入りを果たした。そして、毎年確実に1勝ずつを挙げ、2020年7月、メモリアル・トーナメントを制し、世界ランキング1位に輝いた。

 プロ入りから4年27日で世界一は、タイガー・ウッズ、ジョーダン・スピースに次ぐ史上3番目のスピード出世だ。スペイン出身で世界ナンバー1に輝いたのは、今は亡きセベ・バレステロスに次ぐ2人目だ。

「母国の歴史にジョインできたことを楽しみながら、これからも頑張っていきたい」

 そう語ったラームには、25歳らしからぬ風格さえ漂っていた。

恋人ケリーが教えた英語と食事。

 先人や先輩らはラームの「才能」を絶賛していたが、ラームは生来の天才と言うより、むしろ努力型の秀才なのではないだろうか。

 米ツアーにデビューして間もなかった2017年、ラームは松山英樹としばしば同組になり、そのたびに私はロープ際でラームの恋人ケリー嬢(現在は妻)と出くわし、親しくなって、いろいろな話をした。

 ケリーもアリゾナ州立大学出身で、彼女は陸上部に所属し、やり投げの選手として活躍。ラームとはアスリート学生同士で気が合って交際を始めた。

「ことあるごとに私が彼に英語を教えたのよ」

 大学入学当時のラームはスペイン語しか話せなかったそうだが、ケリーとデートを重ねるうちにラームの英語はみるみる上達した。

「ぶくぶく太っていたジョンを私が15キロ以上、痩せさせたのよ。痩せることで、集中力も持久力もアップするし、動きやすくなる。それが成功に結び付くと説明し、ジョンもそれを信じて、減量に励んでくれました」

 そう言いながら、ケリーはラームの「ビフォア」「アフター」の写真を見せてくれた。

「アスリートの食事と肉体の関係性や大切さを私は陸上部時代に一通り学んだから、それをジョンに実践してもらっています。彼は短気だけど、一方でとても素直。一度信じて決めたら、とことん努力する。その信じ方と努力の度合いが、とにかくすごい」

 ラームに英語を教え、アメリカの生活や文化を教え、導いたケリーは、ラームにとっては救世主なのだろう。大学卒業前に婚約し、彼女の実家から至近距離の場所に2人の新居を構えたラームは、愛するケリーのために、そして自身の夢を実現するために日々邁進。その際のキーワードは、ケリーが言った通り、「信じる」こと、そして「努力」だった。

【次ページ】 ウッズに勝った自信と喪失。

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#ジョン・ラーム

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