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マキロイを抜いてラームが世界一に。
荒れなくなったのは妻の影響も?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2020/07/23 08:00
ジョン・ラームが以前のような不安定さを見せることは少なくなった。妻ケリーの影響も大きいのだろうか。
ウッズに勝った自信と喪失。
ルーキーイヤーの2017年。1月のファーマーズ・インシュアランス・オープンでいきなり初優勝を挙げ、周囲を驚かせた。2018年にはキャリア・ビルダー・チャレンジを制して通算2勝目を挙げ、4月のマスターズでは4位に食い込んだ。秋にはライダーカップに初出場し、欧州チームの勝利に貢献した。
「タイガー・ウッズに競り勝ったことが大きな自信になった。ウッズに勝てたのだから、メジャーでも勝てるはずだと信じられるようになった」
しかし、その自信が打ち砕かれそうになった出来事もあった。翌2019年3月、「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権の最終日にラームは優勝争いを演じていた。
難コースのTPCソーグラスの11番(パー5)。ラームのティショットは左へ曲がり、フェアウエイ・バンカーにつかまった。キャディは安全に「右に出せ。無理しなくても、3打目勝負でバーディーは取れる」と言ったが、ラームは首を横に振り、バンカーから直接グリーンを狙った。その結果、池に落としてボギーを喫し、そこから先はガラガラと崩れて12位に終わった。
信じるときは、とことん。
なぜ、ラームはキャディの助言を聞き入れなかったのか。
「あそこから10回打ったら9回は2オンできる」
そう信じていたから狙ったのだという。しかし、信じて狙った結果、崩れて負けた。となれば、信じたことが間違いだったのか?
「バンカーにつかまっていた僕のボールは、レーキで砂をならした溝跡の中にあり、その細長い溝跡はグリーン方向を向いていた。まるでこの方向にボールを打ち出せと誘っているようだった。だから狙った。でも、実を言うと、あのとき僕は信じ切れていなかったんだ。2オンを狙って打とうとした瞬間、レーキの溝跡の誘いを本当に信じていいのだろうかという小さな疑いが僕の中に浮上した。僕の敗因は、それだと思う」
なるほど。わずかでも疑念を抱けば、その時点で幸運は去っていく。「信じるものは救われる」というフレーズの前には「とことん」という言葉が実は隠されていたことを、あのときラームは敗北から学んだのだ。