令和の野球探訪BACK NUMBER
ドラフト候補右腕、加藤翼が急成長。
「ユウキさん」の指導とエース争い。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/07/22 11:40
スカウトから熱い眼差しを向けられる帝京大可児・加藤翼。ヤクルトなどで活躍した田中コーチのもと、着実に力をつけてきた。
プロに入るのが目標ではなく。
加藤の第一印象について田中コーチは「球が速いわけじゃないですけどスピンを与えられるなと思いました」と資質を感じたと話す。一方で「赤ちゃんみたいと言ったら言い過ぎですけど小中学生みたいな体だったし、中学時代に肩が痛かったらしいので怪我をさせずに成長させたいなと思いました」と課題を認識しながらアプローチしていった。
また加藤自身も「しっかりと頭を使ってイメージをしながらトレーニングするようになりました」と意図を考えながら取り組んでいった。
加藤の特徴である左手のグラブを高く上げるフォームも、リリースの際に押し出すような感覚で投げていたため、田中コーチが「(右腕を)振り下ろせるように左手を高く上げることをしてもいいんじゃないか?」と助言。それを受けて加藤は「上から叩くイメージで投げると左右のブレも無くなり強いボールを投げられるようになりました」と振り返る。
そして「プロに入るのが目標ではなく、プロに入ってからたくさん練習ができて上手くなれるだけの体を持ってプロ入りしてもらいたいんです」という田中コーチの信念のもとで、成長と故障予防を両立させてきた。
ライバル平良の存在。
もう1人加藤の成長に欠かせない存在が平良拳晨(けんしん)だ。昨秋は平良が背番号「1」で加藤は「7」。
得てしてライバルがマウンドに上がっている時、平良は「打たれろと思っています」というが、加藤も「それは……」と苦笑いで頷く。
「普段は仲良いんですけど、同じブルペンで投げていても張り合う存在です。自分が150キロ出した時は平良の機嫌が悪くなるし、僕も平良が良いピッチングをすると悔しくなります。そんな平良の存在があるから、ここまで頑張って来られました」
加藤はこの夏、初めてエースナンバーを背負うことになった。甲子園は中止になったが「今まで結果を出してこられなかった分、ここでアピールをする良い場面だと思うので、勝ちにこだわって自分の最大限の力を出したいです」と気合い十分。切磋琢磨してきた平良ら仲間たちとの1日でも長い夏を願い、プロ入りに向けた自身のアピールを狙う。