猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス山本由伸に備わる“基準”。
満足しないエースはどこまで行く?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/07/20 12:00
打線の援護もなく、今季初黒星を喫したオリックス山本由伸。柳田らに痛打される場面もあったが、次回の登板に期待を抱かせる投球だった。
2試合続けて2失点以上、がない。
驚くべきことに、初めて先発ローテーション入りした昨年、山本は2試合続けて2点以上取られたことがなかった。2点以上取られた次の登板では、必ず0点か1点に抑えているのだ。今年も、自責点ではその法則は継続されている。
うまくいかなかった原因はどこにあって、どう修正すればいいのかを、感覚を研ぎ澄ませ、自分で見つけられる。だから打たれたり、崩れた試合があっても、それを繰り返さない。
「毎週、やることはそんなに変わらないんですけど、フォームのバランスだったり、体の感覚だったり、疲労度だったり、自分の中で細かいチェックポイントがたくさん、本当に死ぬほどたくさんあるので、それを1つずつクリアしていきます。いいボールが行かない時は絶対に原因があって、いいボールを投げられる時も原因があるので、できている部分とできていない部分を、毎日意識しながら練習しています」
21歳に備わるズレを正す“基準”。
いい結果、いい内容の投球をしても、次の登板までには同じようにまたチェックポイントをひとつひとつ確認し、「しっかりフォームを元に戻すようにしている」と言う。
「いいピッチングをした試合のイメージでまた次の週の試合も行くと、意外とよくなかったりする。やっぱり試合で投げると、ちょっと何かフォームのバランスが崩れたり、イメージのズレができたりするので、毎週試合ごとに、自分の中の基準、ポイントにしっかり合わせるということをしています」
21歳にして既に自分のズレを正す“基準”を備えている。このエースは、簡単には揺らがない。
山本は4年目の今季の開幕前、「今年は若手とかそういうのは関係なく、しっかり技術で認めてもらえるような、圧倒的な成績を残したい」と語っていたが、もう完全に「若手」というくくりから飛び出し、球界を代表する投手と言える存在になっている。