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小須田潤太がパラ五輪で超えたい壁。
山本篤との出会いで、夏も冬も――。
posted2020/07/18 19:00
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph by
Kentaro Hisadomi
小須田潤太は、東京パラリンピック出場を目指すアスリートである。
競技種目は2つ。2020年7月時点で世界ランキング13位の100メートル走と、同8位の走り幅跳び。2019年のジャパンパラ陸上ではいずれも銀メダルを獲得しており、国内においては偉大なるパイオニア・山本篤に次ぐ実力者として頭角を現している。
ところが、それだけじゃない。
季節が冬を迎えると、彼はスノーボードを装着して雪山に立つ。1対1の対戦方式でスピードを競う「クロス」は世界ランキング4位、3回の滑走でベストタイムを競う「バンクドスラローム」は同15位。やはり、いずれも世界トップランカーだ。
ということは、つまり。
来年の夏と再来年の冬。もしかしたら小須田は、わずか半年間で2度もパラリンピックに出場するかもしれない。そんなことが本当に可能なのだろうかという疑問から、彼への興味はふつふつと湧いてきた。
21歳、仕事中の事故で。
すべてのことは、わずかな時間で起きた。
2012年3月。21歳。仕事中の事故で右脚を失った。
3年半後の2015年8月。24歳。「軽い気持ち」でランニングクリニックに参加した。
その数カ月後、彼はユニフォームを着てレースを走った。
「なんの夢も目標もない、ただ生きているだけのダメなヤツ」。自身の10代をそう振り返る小須田にとって、驚くほどスピーディーで、とんでもなく大きな変化だった。