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内藤哲也でもオカダでもなかった……。
裏切り者・EVILがIWGP新王者に!
posted2020/07/13 20:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
いつか決別の時が来るとは思っていた。だが、このタイミングでその瞬間がやって来るとは思わなかった。
7月11日と12日に新日本プロレスは、大阪城ホールに約3分の1の観客を入れて試合を行った。
初日は3318人、2日目は3898人。2月以来、初めて生で観戦できる新日本プロレスだった。実に136日ぶりに、長く待ちわびた興行としての再開だった。
席の間隔は大きくあけられて、使用できないシートには紙が貼られている。コロナ禍の下での新たな観戦ルールでは、大声を出してレスラーに声援を送ることはできない。会場の外でも、会場内のスクリーンでも観戦マナーが繰り返して流されていた。拍手あるいはリズムのある手拍子が大阪城ホールに小気味よく響いていた。でも、なぜかプロレスの会場にいる気がしない。「やっぱり、違う」と感じた。
ブーイングを浴びせたくても、それができない。そんな苛立ちは、コロナウィルスにぶつけるしかない。「ああ」とか「オー」とかいう気持ちの声は自然に出てしまうけれど、みんな控えめだ。
実況のアナウンサーの声が、会場の隅々までよく聞こえる。そんな異様な静けさの空間を、「内藤、頑張って」「EVILガンバレ」といった幼子の声が通り抜けていった。
無法に次ぐ無法でオカダを撃沈。
大会初日の7月11日、EVILはニュージャパンカップ決勝でオカダ・カズチカを倒した。
内藤哲也らの「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」ではなく、外道らと組んでいる「バレットクラブ」メンバーによる、無法な手助けをさんざん受けての勝利だった。彼らは乱入と反則を繰り返し、その騒動の最中でEVILがオカダをフォールしたのである。
ニュージャパンカップで優勝したEVILは、その翌日、内藤の持つIWGPヘビー級とインターコンチネンタルの2つのタイトルに挑戦することになっていた。
そのニュージャパンカップ優勝直後のリング上でのこと。EVILは優勝を祝いに来た内藤と、いつものように頭上で拳を合わせたが……ここでいきなり内藤を投げ飛ばした。
裏切りの始まりだった。