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内藤哲也でもオカダでもなかった……。
裏切り者・EVILがIWGP新王者に!
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/07/13 20:00
ニュージャパンカップで優勝した翌日の試合で、IWGPヘビー&インターコンチネンタル王者・内藤哲也を破ったEVIL。
「あんな奴らは腐りきっているよ。虫唾が走る」
EVILは内藤の下で「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の一員として2015年10月から一緒にやって来た、言わば長年の盟友である。内藤からタッグパートナーの「パレハ(相棒)」として指名され、ロス・インゴのキャラクターの中でも異彩を放つ存在にまでなっていた。
これまで、“EVIL(邪悪)”というリングネーム通り、すべての言動を悪に染めて非難され続けてきたが、その非難のすべてを聞き流してきたEVIL。あの小川直也が使っていた強烈な大外刈りである必殺技「STO(Space Tornado Ogawa)」を、わざわざ「EVIL」と名を変えてフィニッシュホールドとしてちゃっかり活用し、これまで多くのフォールを奪ってきた。
無観客で行われた7月3日のニュージャパンカップ準決勝ではSANADAを、大阪城の制限された観客の前で行われた11日の決勝ではオカダを、さらにその翌日のIWGPヘビーとインターコンチネンタルという内藤が持つ2つの王座に挑戦した試合でもEVILは「EVIL」でフォール勝ちしている。
そのフォールへの過程には……椅子や机を使った荒っぽい反則と度重なる非情な急所攻撃があった。
「勝つためには何でもやるって言っただろう。史上初の3冠王だ。何が何でも優勝すると言っていたろう。全部、オレが仕組んだ。バレットクラブは最高のチームだよ。あんな奴ら(ロス・インゴ)は腐りきっているよ。虫唾が走る」
バレットクラブを操り、ロス・インゴと完全に決別したEVILは我が道を行く。
「(内藤との試合?)見ればわかるだろう、(内藤の)攻撃のパターンなんかすべてお見通しだよ」
それぞれの思惑は別として、すべてがEVILの計算通りに運んだ格好となった。
内藤哲也と決別した夜。
内藤と二冠をかけて戦うことになっていた7月12日の試合前。オカダ狩りから一夜が明けたEVILは、さらなる変身を果たしていた。
この日のために用意していた古代ローマ帝国の戦士のような黒いコスチュームを身に着けていた。
それは、さらなる闇と悪の世界への招待状のようであり、束ねていた長い髪を解いて、ワイルドに垂らして見せる光景は狂気をはらんでいるようだった。