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東京五輪では姉妹で金メダルを!
頑固な妹・川井友香子の青春。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySachiko Hotaka
posted2020/07/13 10:00
バッサリ切った髪の毛について質問されて照れる川井友香子。姉妹で金メダルという目標は揺るがない。
東京五輪のライバルは、キルギスのチニベコワ。
昨年5月のアジア選手権では別の試練が待ち受けていた。
海外の大きなシニアの国際大会では、友香子の傍らに初めて姉のいない大会だったのだ。遠征前に友香子はひとつだけ心に決めた。
「東京オリンピックが終わってからのことを考えると、自分もひとりの選手として自立しないと強くなれない」
果たして順調に勝ち上がり、決勝ではアイスルー・チニベコワ(キルギス)と激突。途中まで6-1でリードしていたが、ラスト6秒で逆転負けを喫した。チニベコワには前述した同年の世界選手権でも苦汁を呑まされている。友香子を破ったこのキルギスのベテラン選手は世界選手権もアジア選手権も制している。
東京オリンピックでは最も警戒すべき相手になってくるだろう。
「これからはレスリングが仕事」
今春、友香子にちょっとした環境の変化が訪れた。
至学館大を卒業し、姉と同じジャパンビバレッジ所属の社会人レスラーとなったのだ。
「今までは部活動のひとつとしてやってきた。これからはレスリングが仕事となり、結果を出していかなければならない。それが会社の方々への恩返しになるので、今まで以上に結果にこだわっていかないと」
<どうしていつもそんなに仲がいいの?>と突っ込みたくなる姉との仲は、友香子の肩書が変わっても変わりそうもない。
7月2日、3カ月ぶりに再開した代表合宿にも、名古屋からふたりでやってきた。梨紗子からのアドバイスだったら、友香子は素直に聞き入れる。
しかしながら、ひとつだけ暗黙のルールがある。ふたりでスパーリングをしなくなって久しいというのだ。
「やれば、ケンカになる」
それが理由だった。
「これからも梨紗子とはやらない。そこは変わらない」