濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
無観客試合は“純度100%”の強さ!
那須川天心、90秒KOの衝撃を解析。
posted2020/07/13 12:45
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
(C)RISE
那須川天心の2020年初ファイトは、90秒で終わった。
7月12日の『RISEonABEMA』無観客大会。メインイベントに登場した那須川は昨年大晦日以来の試合に臨み、公募から選ばれたシュートボクシングの日本フェザー級1位、笠原友希を1ラウンド1分30秒で下している。
公式記録は3ノックダウン。ラウンドの半分の時間で3度倒したわけだ。
「気がついたら倒れてました」と笠原は言う。「同じリングに立てたことが嬉しかったです。これが那須川天心なのか、と思いました」とも。圧倒されるしかなかった、というところなのだろう。彼は21歳の那須川よりも年下、まだ19歳である。応募者の中では最も実力があったはずだが、それでも那須川天心は次元が違った。
「差をしっかり見せようと思ってました。違う世界を見せてやろうと」
勝利者インタビューでの那須川の言葉だ。こともなげにそう言って、誰もが納得できてしまう勝ちっぷりだった。
この無観客試合は、那須川が試合後に言ったように「格闘技が帰ってきました」と世間に伝えるためのものだった。格闘技業界に向けての“そろそろ動き出そう、また面白いことをやってやろう”というアピールでもあった。自分が動くこと自体にメッセージ性があることを、那須川はよく理解していた。
“自粛明け”でも成長していた天心。
緊急事態宣言下では、ジムでの十分なトレーニングはできなかった。しかし那須川は、それをまったく言い訳にしなかった。曰く「毎日、何ができるか考えました」。
ベースは少年時代からの父との練習だ。創意工夫で強くなった実感があるから、練習が制限されても、その状況での最善を尽くすだけ。その思考そのものにも那須川の非凡さがある。
実際、彼は“自粛明け”である今回の試合で、調子を崩さなかったというだけでなく明らかに成長していた。本人も「課題が克服できたと思います。幅広い勝ち方だったり」とコメントしている。