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東京五輪では姉妹で金メダルを!
頑固な妹・川井友香子の青春。
posted2020/07/13 10:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Sachiko Hotaka
2016年8月18日(現地時間)、川井友香子は家族とともにリオデジャネイロのレスリング会場にいた。63kg級の日本代表として出場した3歳上の姉・川井梨紗子を応援するために。4年前、異国でのオリンピックの風景を友香子は鮮明に覚えている。
「あの時、私は肩をケガしていて、練習もできていない状態でした。そういう中で梨紗子の試合を間近で見た。梨紗子はお姉ちゃんで身近な存在だけど、レスリング選手としてはかけ離れた存在になっていくのではないかと感じていました」
大学生だった姉が五輪代表を目指して戦っていた頃、友香子は至学館高に在籍する高校生レスラーでシニアの大会にも積極的に挑戦していた。2015年の全日本選手権では60kg級で決勝まで進出。梨紗子との禁断の姉妹対決を実現させたが、0-10で完敗を喫している。
この一戦を筆者は現場で取材しているが、「お姉ちゃんと比べると、妹はまだまだ」という印象しかなかった。正直、この時点ではオリンピックを感じさせるレスラーではなかった。ようやく友香子の存在が視界に入ってきたのは、2017年の世界選手権に63kg級代表として初出場した時だろうか。
「頭が真っ白になって何もできなかった」
友香子は運を持っていた。
当初出場を決めていた代表選手がケガで出場できなくなったため、出場者決定戦が行われそのチャンスを掴んだのだ。
とはいえ、世界の壁は厚い。パリで行われた世界選手権で友香子は3回戦で敗れ、8位に終わる。
「頭が真っ白になって何もできなかった」
彼女にとってはいい経験になったのだろう。同年12月の全日本選手権では59kg級にエントリーして初優勝を飾る。その勢いで2018年6月の全日本選抜選手権では62kg級を制して2年連続世界選手権出場の切符を手にした。