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新鍋理沙「自分が納得できる道を」。
厳しさを貫いた11年のバレー人生。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySAGA Hisamitsu springs
posted2020/07/01 11:00
引退会見の終盤には涙声でファンへ感謝の言葉を述べた新鍋理沙。代表でも久光製薬でも攻守の両面でチームに欠かせない存在だった。
新鍋が貫いたストイックな姿勢。
常に世界を視野に入れて戦う。それは日本代表として挑む試合だけでなく、クラブとしてアジア、世界制覇を目標に掲げる久光製薬で戦う時も同じだった。
世界選手権やワールドカップ、国際大会の直後にVリーグが開幕するたび「身体がボロボロすぎてしんどい」と会えば冗談交じりで弱音を吐いたが、どれだけ肩や手指に巻くテーピングが増えようと、プレーやコンディショニングで一切の妥協はなかった。
“チームが勝てばいい”“負けたら悔しい”ではなく、勝ち負け以前にやるべきことが徹底できたか。納得できなければ朝早くから練習し、全体練習後も可能な限り練習する。新鍋曰く「中田(久美・現日本代表)監督が久光の監督になった頃から、私生活やバレーに対する追求の仕方、細かいところまで考えるようになった」と振り返るように、結果にこだわり、そのための経過に手を抜かないストイックな姿勢で、バレーボールに打ち込んできた。
周囲にも厳しく、嫌われても構わない。
自らをどれだけでも厳しく追い込むせいか、周囲に対する要求も常に厳しかった。
「試合の中でも練習でも、明らかな課題が出る。それって、絶対に大事な場面で自分の足を引っ張るんです。だったらそうならないように、どれだけ苦手なことでもひたすら練習するしかないじゃないですか。それなのに、人より練習もせず、苦手だから得意なところでカバーするとか言われると納得がいかないんですよ。それで勝てるほど、簡単な世界じゃないですから」
嫌われても構わない。厳しさを露わにしながらも、納得するプレーをして勝つ。ただそれだけにこだわり続けて来た。
だが、そんな選手生活の集大成と位置付けた2020年、東京五輪の延期が決定した。これまでと同じように、心身を張り詰めた生活を続ける覚悟があるか。新鍋は「絶望というか……。私にとっての1年は、とても長く感じました」と吐露した。