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道悪のクロノジェネシスは最強だ。
宝塚記念を制し、牝馬の時代を宣言。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2020/06/29 11:40
ラスト3ハロンは、2番目に速いキセキと0.9秒差。直線を向いた時点でほぼ先頭の位置取りからその脚を繰り出されては他馬はどうしようもなかった。
道悪では4戦4勝、すべて圧勝。
ラスト200m手前で、北村の左ステッキを受けたクロノジェネシスが桁違いの脚で抜き去り、先頭に躍り出た。
そこからはワンサイドゲームだった。
北村の見せ鞭に反応してさらに脚を伸ばし、2着のキセキを6馬身突き放してフィニッシュ。3着のモズベッロまでは、さらに5馬身も離れた。1番人気に支持されたサートゥルナーリアは、モズベッロから1馬身3/4遅れた4着に終わった。
クロノジェネシスは、前日発売の段階では単勝5.3倍の3番人気だったが、終わってみれば、単勝4.1倍の2番人気。これは、馬場状態が回復しないと読んだファンが食指を伸ばした結果だと思われる。
そのくらい、クロノジェネシスの道悪での成績は突出している。
それまで、稍重の新馬戦と秋華賞を2馬身差、重馬場の京都記念を2馬身半差で完勝。この宝塚記念を勝ったことで、道悪での成績は4戦4勝となった。しかも、すべて2着を突き放しての勝利なのだから恐れ入る。
馬体の増加分そのまま強くなる。
しかし、道悪巧者というだけで、これほどの圧勝劇を演じられるわけがない。
阪神ジュベナイルフィリーズ2着、桜花賞とオークス3着という結果が示しているとおり、大舞台で安定したパフォーマンスを発揮する、底力のある馬なのだ。
秋華賞を勝ったときは、オークスからプラス20kgの馬体重。そして今回は、前走の大阪杯からプラス10㎏の464㎏という、最高馬体重での勝利だった。馬体が大きくなったぶんだけ強くなるという、理想的な成長曲線を辿っている。
「結果を出せてよかったです。クロノジェネシスを褒めてあげてほしいと思います」
そう話した北村は新馬戦からずっとこの馬に騎乗しており、これが11戦目のコンビだった。