プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
あのとき猪木の舌は出ていなかった。
大どんでん返しのIWGP決勝戦秘話。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/06/28 11:00
IWGPリーグ優勝決定戦。リング上で昏倒するアントニオ猪木。セコンド陣が必死に目を覚まそうとしていた。
事件から1カ月後。猪木と会って話した……。
「事件」から1カ月後、猪木に会って話をした。
猪木は思ったより元気だった。猪木は話の流れの中で「ケガをしたとき」という言い方をした。明け方まで話を続けたが、本人が試合そのものについて語ることはなかった。
猪木が、多くのファンが願った通りに優勝していたら、それ以降は違う世界が開けていたのかもしれない。だが、それはかなわなかった。見方を変えれば、かなわなかったことによって、猪木の引退、そして野望はさらに先に延びることになったのかもしれない。
この優勝戦がもし、当初の壮大な計画のようにニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われていたとしたら……違う結果が出ていたような気がしてならない。
猪木のKO負けというインパクトと謎を残したまま、IWGPは翌年も開催されることになった。
だが、さらに成長したホーガンが猪木の前に立ちふさがることになる。