サムライブルーの原材料BACK NUMBER
元教師で今はJリーガー兼営業マン。
異色の経歴、FC今治・中野圭に聞く。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byFC Imabari
posted2020/06/26 17:00
主力選手の1人として活躍しながら、地元スポンサーへの営業回りも続ける中野。いよいよJ2昇格をかけたリーグ戦が始まる。
“どうなっとんじゃ”と厳しい意見も。
足を運べば当然ながら試合の話になってくる。
「勝てない時期には激励の言葉がある一方で“どうなっとんじゃ”という厳しい意見をいただいたりします。直接言われることによって試合の結果に対する責任感が増すというところはありますね」
パートナーからはクラブに対する要望や意見も聞く。その声をクラブに届けるとともに、多くのパートナーに支えられていることを現場の選手たちにもしっかり認識してもらうという“橋渡し役”も担っている。
彼は行動の人だ。
外回りの際に、パートナー関係ではない企業や店がポスターを貼ってくれていると、直接感謝の言葉を伝えるようにしている。
次の営業につながるということもあるが、FC今治を応援してくれる輪が広がっていることを純粋に嬉しく思っているからだ。
“夢を持て”と“目に見えない資本”。
中野には岡田イズムが流れている。
「岡田さんの話はたとえ同じ内容であっても、聞くたびに引き込まれるし、感じるものが違ってくるので不思議です。
岡田さんからの言葉で大切にしているのが“夢を持て”。それと“目に見えない資本”。これからの世の中はそういうことが大事になってくるという岡田さんの考えに共感を覚えています」
夢があるから二足のわらじも厭わない。
“目に見えない資本”とはFC今治の社外取締役を務める、多摩大学大学院の田坂広志名誉教授が提唱した言葉だ。
共感、信頼、感動といった心の豊かさに目を向けたいとする岡田の思いがある。彼のバックオフィススタッフとしての行動もそこが規範となっている。
ほかのチームメイトが全体練習後、個人トレーニングや体のケアなど自分の時間に充てるなか、中野は午後7時までスタッフ業務をこなす。外回りの後でPCに日報を書き込んで仕事は終了。
自宅に戻って4歳、2歳のかわいい子供たちと家族団らんの時間を大切にして、翌朝また練習からスタートするという毎日だ。