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ホークスの先発、空席はあと3つ。
12年目・二保旭を推したい理由。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/06/11 11:40
6月2日、オリックスとの練習試合に先発したソフトバンク・二保旭。コロナでの中断をはさんでも好調を保っている。
二保を先発に入れないのはもったいない。
二保は今季12年目の右腕。一軍通算の勝利数は8勝で、先発ローテとして長い期間を任されたこともない。バンデンハークや石川はシーズン2桁勝利の経験がある。松本も実績は乏しいが、24歳という若さはアドバンテージになる。長い目で見れば経験を積ませたいところだ。
しかしながら、今年の二保を先発ローテに入れないのはあまりにも勿体ない。そう思わせるだけの投球を彼はずっと見せてくれている。
この開幕直前の練習試合。6月2日のバファローズ戦(京セラドーム)で3回2/3を2安打無失点、同7日のタイガース戦(甲子園)を4回2安打無四球で無失点と好投したこともあるが、二保にとってより大きな価値があった登板は自粛期間前に行われた3月21日のマリーンズ戦(PayPayドーム)ではなかろうか。
未経験の7回に発揮した新しい自分。
その日は70球~80球の投球数を目処にマウンドに上がり、5回を終えた時点で71球に達していた。だが、二保は「まだ投げさせてください」と首脳陣に直訴して続投。
そして球数が100を超えた7回に、2死二塁のピンチを迎えた。
「去年も先発をさせてもらったけど5回まで投げきれないことが多かった。去年はシーズンへの準備段階で先発と中継ぎの両方をいけるように練習してきたけど、今年は先発一本に絞って調整をしてきました」
昨シーズンは8度先発したが、うち5度は5回未満で降板していた。最長でも6回まで。あくまで先発の谷間を埋めるためのショートスターターという評価しか得られなかった。
一軍クラスの試合では未経験といっていい7イニング目のマウンドで迎えたピンチ。だが、それは新しい自分をアピールするための絶好の機会だった。
気迫で投げたこの日106球目は143キロを計測。セカンドゴロに打ちとっての見事7回1失点は、先発ピッチャーとして十分すぎる働きであった。
「7回を投げきった後でも、まだいけるという感覚でした」