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ホークスの先発、空席はあと3つ。
12年目・二保旭を推したい理由。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/06/11 11:40
6月2日、オリックスとの練習試合に先発したソフトバンク・二保旭。コロナでの中断をはさんでも好調を保っている。
綺麗なストレートはほとんど投げない。
また、二保を推したい理由は、彼の独特な投球スタイルにもある。
綺麗な回転のストレートはほとんど投げない。ツーシームを多投して、バットの芯を外して内野ゴロの山を築いていく。
そのスタイルを習得したのは昨年の春頃。独学だった。工藤監督が就任した'15年には中継ぎで44試合に登板して6勝をマーク。しかし、その翌年に右肘を痛めてトミー・ジョン手術を受けた。
復帰後、球威が落ちたわけでは決してない。現在もストレートを投げれば、145キロ以上を出せることはわかっている。しかし先発起用も増える中で、生き残る術として自ら考えて導き出した答えが、ボールを巧みに動かすことだった。
今では、1イニングの中でまともなストレートを1球も投じないことも珍しくない。
「1巡目や2巡目は相手バッターも球の軌道が分からないから戸惑うと思う。だけど、3巡目以降に相手がそれを分かった中で、どのように配球を組み立てていくか」
取材の中でそんな駆け引きを口にするとき、二保は楽しそうに笑う。自分のピッチングに確かな自信がある証拠だ。
千賀とタイトルを分け合った2012年。
先ほど「実績が足りない」と記したが、8年前の2012年シーズンには、二軍ではあったが素晴らしい成績を残したことがある。ウエスタン・リーグでエース格として先発ローテを任され、17試合に登板して11勝0敗、防御率1.44で最多勝を手にした。
この年、ホークスのファームでもう1人の柱として先発していたのが千賀滉大だった。千賀は21試合7勝3敗、防御率1.33で防御率1位。2人でタイトルを分け合ったのだ。
また、二保はホークスの十八番である育成ドラフト出身('08年育成ドラフト2位)であることも追記しておく。
「競争を意識しすぎると、何と戦っているのか分からなくなっちゃう。自分が考える相手は味方ピッチャーじゃない。結果を残し続けていくことだけを考えます」
二保は常々このように話してきた。気負わず、自然体で、12年目のシーズンの始まりを待つ。自分史上過去最高のシーズンになることへの自信を、静かに胸の中に秘めて。