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松山英樹は“窮地”に異常なほど強い。
ドライバーが折れても勝った6年前。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAFLO

posted2020/06/01 15:00

松山英樹は“窮地”に異常なほど強い。ドライバーが折れても勝った6年前。<Number Web> photograph by AFLO

6年前の今日、米ツアー初優勝を挙げた松山英樹。あらゆるアクシデントにも動じない強さを発揮した。

最終日18番で折れたドライバー。

 キャリアの数あるポイントでも、彼が異彩を放つことを世界に確信させ始めたのが、いまから6年前のメモリアルトーナメント最終日。2014年6月1日は、現在5勝のPGAツアーで最初のタイトルを手にした日だ。

 青木功、丸山茂樹、今田竜二に続く日本人史上4人目(2018年に小平智が続いた)の米ツアー制覇は当時、ルーキーイヤーでの初優勝、日本人最年少、試合は帝王ジャック・ニクラスのホスト大会……といった、単なる1勝にとどまらない様々な要素があった。

 なかでも奇怪なエピソードとして残ったのが、勝負を決める局面で「ドライバーが折れてしまった」(にもかかわらず勝った)ことだった。

 最終日、トップに1打ビハインドで迎えた最終18番ホール、ドライバーショットを放った松山は右に曲がっていくボールを確認すると、ガッカリしてフィニッシュをほどき、クラブで地面を叩いた。フォローするわけではないが、映像を見る限り「怒りに任せて力いっぱいに叩きつけた」という表現は相応しくない。この時ばかりは少々“控え目”に見える。

「こんな場面で折っちゃうなんて」

 そもそも、ゴルフクラブはそう簡単には壊れない。この時の松山のドライバーは、ティイングエリア場の集音マイクを支える細い鉄棒の先にヒットしてシャフトが折れてしまった。褒められる行為でもないが、不可抗力が加わったことも事実だった。

 当時キャディを務めていた進藤大典さんは2打目に向かう際、選手を動揺させまいと事も無げに壊れたクラブをバッグにしまったが、「こんな場面で折っちゃうなんて面白いなと思いました」と当時を回想する。「ここでバーディを獲って、プレーオフで3番ウッドを使って優勝したら……そんな選手はいない、伝説じゃないかって、ワクワクもしたんですよね」

 極限の緊張感に身を寄せながら、ふと湧いた期待は現実になった。右に曲げたはずのティショットは運よくフェアウェイに戻り、第2打をピンそばにつけてバーディを決めた松山は、土壇場でトップに並んで見せた。

 たしかにプレーオフを戦ったケビン・ナはショートゲームに秀でており、パワーにやや乏しい。松山は3ウッドでも相手のドライバーショットと同程度の距離を出すことができた。とはいえ、それを考えても余りある落ち着きぶりで最終局面を戦い、勝利につなげた。

【次ページ】 どんな状況でも動じない松山。

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