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野球の旨味は「決定的瞬間」の前後。
試合を“通し”で見ることの新鮮さ。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byKyodo News
posted2020/05/28 19:00
王さんが両手をあげた有名な写真を知っている人の何割が、1打席目の成績や達成後のセレモニーを知っているのだろうか。
「決定的な瞬間」には前後がある。
それがMLBの古い「録画中継」である必要はないし、「江夏の21球」で知られる広島対近鉄の1979年の日本シリーズでもよければ、「バース、掛布、岡田のバックスクリーン3連発」の試合でもいい。
もっと身近なところで言えば、ダルビッシュ有投手や前田健太投手のNPBデビュー戦だっていいし、田中将大投手(現ヤンキース)の30連勝だっていいわけだ。「決定的な瞬間」だけを切り取るのではなく、「その試合」の「録画中継」を見れば、いろんな発見があるのではないかと思う。
地上波や衛星放送が主体の日本で、有料チャンネルも合わせればチャンネル数が900を超えるケーブル局主体の米国みたいに「垂れ流し」的に放映できる場所は限られているだろうが、YouTubeのように比較的自由なプラットフォームもある時代だ。
他人から「あん時は凄かったんだぜ」と聞いたり、「名場面」だけを眺めるだけではなく、自分自身でそれらの「録画中継」を見て「へぇ、こんな感じで投げてたのか」と実感することの方が、野球の旨味みたいなものはしっかり、伝わるような気がする――。