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引退会見でも彼はラガーマンだった。
大野均の19年、決意と感謝と今後。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO SPORT
posted2020/05/25 19:00
192cmの体格、それに似合わぬ走力、そして何より、溢れ出る闘志。大野均が日本ラグビーに残したものはとてつもなく大きい。
自分の会見で、仲間たちを思う。
会見の冒頭で、大野は「今年も多くの素晴らしい選手が引退していくなかで、私に対してこのような場を設けてもらってありがとうございます」と感謝の気持ちを表わした。
所属する東芝からは、大野を含めて6人の勇退が発表されている。トップリーグの他クラブからも、今シーズン限りでピッチを去る選手が明らかにされている。
自分のために用意された記者会見に臨むにあたって、彼はともに汗を流したチームメイトに、ピッチ上でしのぎを削った対戦相手に思いを馳せたのだろう。オンライン上でも自分の思いを届けることができる立場に感謝し、同じ機会を持てない選手の心境を推し量ったに違いない。
大野は自分本位にならない。
新型コロナウイルスによる外出自粛要請がなければ、大野にはもっと大きくて華やかなお別れの舞台が用意されたはずである。最後にスポットライトを浴びてジャージを脱ぐことが、彼には許されていた。
それでも、自分本意にならないのが大野という人間なのだ。チームメイトはもちろんライバルへのリスペクトを忘れないラガーマンならではのメンタリティを、彼は引退の瞬間に示した。「大野均にしかできないこと、大野均だからできること」を、セカンドキャリアの第一歩目で私たちに見せてくれたのである。