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五輪連続出場中のアマレス高谷惣亮。
自宅待機も「そんなに問題ではない」。
posted2020/05/11 08:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Sachiko Hotaka
レスリング男子フリースタイル86kg級で東京オリンピックを目指す高谷惣亮(ALSOK)は筋金入りの異端児だ。中学生の頃から大きな大会に出場するたびに「お前、髪の毛が長すぎだ! 切れ!!」と雷を落とされた。
いまでこそ髪の毛の長い男子レスラーは珍しくないが、時代は16~17年ほど前。レスラーの髪の毛といえば、短髪が当たり前だった。口うるさい指導者から見れば、京都の片田舎からやってきたロン毛の少年レスラーは格好の標的となったのだ。
そのたびに高谷は「ハイ、ハイ」と相槌を打ちながら聞き流し、自分に言い聞かせた。
「髪の毛を切って世界チャンピオンになれるなら切る。でも、切ったからといってなれるわけではない」
「大事な試合の前には何かしらの試練が」
実力は十代の頃から折り紙付き。高校時代には早くもシニアの全日本選手権のファイナリストに。その頃、スピーディーなタックルと類まれなイケメンぶりから“タックル王子”と名付けられた。
オリンピックには拓殖大学卒業後のロンドン・オリンピックから出場している。
「23歳の時だったので、(オリンピックに対して)そんなに難しい感情はなかった。世界選手権に一度も出ることなく、初めての世界大会がオリンピックでした。初戦敗退という結果は自分なりにダメージがありましたね」
高谷は全ての挫折を糧にする。2014年の世界選手権では銀メダルを獲得。そして2016年のリオデジャネイロ・オリンピックにも出場を果たし、7位入賞を果たす。
とはいえ、リオの時には試合の1週間前に内側じん帯を痛めるという試練を味わった。
「やっぱり大事な試合の前には何かしらの試練があると思っている。それが今回コロナという形で現れたんだと思います」