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五輪連続出場中のアマレス高谷惣亮。
自宅待機も「そんなに問題ではない」。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySachiko Hotaka
posted2020/05/11 08:00
東京五輪へ照準を合わせ順調に仕上がっていた高谷惣亮。新型コロナ禍での調整の難しさを問うと「そんなに難しい話ではない」と一笑。
トレーニング動画のライブ配信にも挑戦。
とはいえ、調整はままならない。
練習の拠点とする拓殖大学は緊急事態宣言が解除されるまでキャンパス内への入構を原則として禁止しているので、高谷は自主トレを余儀なくされている。
「自宅でできる限りのトレーニングをしています。正直、僕はそんなに外に出るタイプではないので、練習ができないということ以外はそんなに問題ではない」
今回の緊急事態宣言をきっかけに、「今までできないことに挑戦しよう」とSNSによるトレーニング動画のライブ配信を試みる。
「レスリングはマイナー競技。少しでも知ってもらうために、自分からどんどん発信したいと思いました」
ロンドンでは最年少。東京では最年長に!?
もともと高谷はネガティブな感情は表に出さない性格として知られている。今回自分が置かれた立場と重ね合わせるかのように、拓殖大の恩師である西口茂樹氏(現・日本レスリング協会強化本部長)から聞いた話を引き合いに出した。
「あるハードル走の大会で、開催中に強い逆風が吹いてきた。出場している選手たちは『今日は絶対いい記録が出ない』と口を揃えたけど、その中にひとりだけ『ああ、風が気持ちいい』と呟いている奴がいたそうです。西口先生は『みんながネガティブな感情になっている中で唯一ポジティブなことを発信しているその子はすごい』と。悪い要因もどう捉えるかによってプラスに持っていける。これは大事なことだと思いますね」
東京オリンピック出場を決めれば、3大会連続出場となる。男子のレスリング選手ではグレコローマンスタイルでシドニー、アテネ、北京に出場した笹本睦以来の快挙だ。
「ロンドンに出た時には(男子レスリングの日本代表の中では)最年少だったけど、今回最年長だったら、それはそれで誇らしいこと」
年齢を重ねることはネガティブなことではない。高谷は逆に強くなっていることを実感している。さらにレスリングという競技に対する思いにも変化が現れた。
「20代の頃はやりながら、きついという感情が先行することが多かった。でも、30歳を越えてから楽しめるようになってきたんですよ。驚きです。息も上がるけど(気持ちも)楽に上がる」