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五輪連続出場中のアマレス高谷惣亮。
自宅待機も「そんなに問題ではない」。
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySachiko Hotaka
posted2020/05/11 08:00
東京五輪へ照準を合わせ順調に仕上がっていた高谷惣亮。新型コロナ禍での調整の難しさを問うと「そんなに難しい話ではない」と一笑。
年初は、まだ新型コロナ禍に楽観論が出ていたが……。
ロンドンやリオの時にはいずれも前年度の世界選手権で出場枠を勝ち取ったわけではない。いずれも、同年開催のアジア予選で得たものだ。今回も3月27~29日まで中国・西安で開催予定だったアジア予選で出場枠を勝ち取ろうと計画していた。
しかし、中国・武漢で新型コロナウイルスの感染が拡大したことに伴い、西安での開催は不可能に。新型コロナが中国で感染拡大した時点で高谷は「中国でのアジア予選は難しい」と予想した。
「2~3月の時点では『4月には収束して、オリンピックも予定通りに開催できる』という楽観論が出ていた。ところがどっこいこんなに広まるとは……」
結局、アジア予選はキルギスに変更されて行われると一度は発表になったが、新型コロナの拡大に伴い、中央アジアに位置するこの国も開催を返上してしまう。
高谷は「実際キルギスに到着したら(国によっては)2週間ほど隔離されるという話を聞きました」と打ち明ける。
「そうなると、選手によって結構不公平なコンディションを強いられるので、キルギスでの開催も絶対無理だと思っていました。一応調整は続けていましたけどね」
「だからそんなに難しい話ではなかった」
予選開催には疑心暗鬼になる一方で、調整は続けなければならない。そういう時のモチベーション維持は難しいのではないか。そう水を向けると、高谷は「もう僕も31歳になるので」と一笑に付した。
「アジア予選がないならないで、もう一度自分のモチベーションを落して、もう一回上げていく作業をしていけばいい。ずっとベストをキープするというのは絶対無理ですからね。だからそんなに難しい話ではなかった」
アジア予選には高谷も含め10名の日本人レスラーが出場する予定だった。まだ出場内定という通知を受けていない立場は精神的に結構きついのでは? と思ったが、高谷は東京オリンピックまでにアジア予選というワンクッションがあることの重要性を説く。
「すでに代表に内定している人はオリンピックは一発勝負みたいな感じ。一方、これからアジア予選に挑む僕らは代表内定者より大会数がひとつ多いというアドバンテージはある。試合勘が養えることはいいことだと思う」