“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
初のJ1に挑む大分MF野村直輝。
中断する今、考える「10番」の仕事。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/05/10 08:00
今季から大分に移籍した野村直輝。開幕戦では途中出場ながら存在感を残した。
クラブや地域と共に成長したい。
J1で戦う意義を深く知る大分トリニータというクラブで、そしてその歴史を築こうと牽引する片野坂知宏監督の下で戦うことで、「新しい10番の価値」は生み出される。彼はそう信じて疑わない。
「片野坂監督は、戦術家で情熱家というイメージを以前から持っていましたが、まさにその通りの人。プレー以外の部分も指導してくれる。その面はかなり自分の中で響くものがありますし、この人のために結果を出さないといけないと感じさせてくれます。
よくミーティングで『応援してくれる人たちを元気づけるのが俺たちの役目』と言ってくださるんですが、まさにそうだと思うし、その考え方は僕と根本的な部分で一致しています。試合を決定づけるとか、チームの苦境を助ける存在にならないといけないとは思っていますが、そこだけにこだわり続けるのではなく、もっと広い視野を持って、クラブや地域と共に成長していくための力になれる、新しい10番の価値をみんなと協力して作り出したいと思っています」
今はその価値をより客観的な視点で醸成している最中だ。彼自身はそう解釈しているからこそ、この中断期間を焦りや不安を抱くことなく、まっすぐに未来に目を向けられている。
「新しいリーダー像というか、いつか自分がチームや組織の中で発言をしないといけない時が来ると思うんです。チームの結果が良ければ、そういうのって表面化せずにうまく回っていくのですが、もし結果が出ない時や苦境を迎えた時に、自分に何ができるのかを今からしっかりと考えて準備しておかないといけない。大分に来て、街のポテンシャル、クラブのポテンシャルを感じるからこそ、今はそれを構築しておく時間でもあると捉えています」
受動的ではなく能動的に発信できるように。それがチームのためになり、最終的には自分の成長につながるように。野村は今、プロ7年目を迎える自分を磨く重要な時間を過ごしている。