フランス・フットボール通信BACK NUMBER
カダフィ大佐後のリビア・サッカー。
戦下の国のクラブ、代表チームとは?
text by
フランク・シモンFrank Simon
photograph byfacebook@AlnsrClub
posted2020/05/05 19:00
内乱状態にあるリビアのクラブチーム「アルナスル・ベンガジ」が、アフリカサッカー連盟カップで準々決勝に進む快挙!
武装した兵士に囲まれ威嚇され……国から脱出。
2017~18年にアルイティハド・トリポリの監督を務めたフランス人のディエゴ・ガルジットは、リビアで最後に開催されたシーズンのリーグ戦をよく覚えている。
「私はセキュリティがしっかりしたトリポリのホテルに滞在していた。クラブの設備も充実していて、生活スペースやふたつのジム、天然芝と人工芝の質の高いピッチを揃えていた。練習にはいつも多くのサポーターが見学に来ていた。
リーグはトリポリとベンガジのふたつのプールに分かれ、勝者がプレーオフを戦って優勝チームを決めた。
当初、試合は無観客でおこなわれたが、やがて観客の入場が認められた。雰囲気は素晴らしかったよ! でも、それも、私たちがベンガジに試合に行くまでだった。空港からスタジアムまでは車で移動したが、車から降りると武装した兵士たちに囲まれて威嚇された。本当に恐ろしかった……。
試合はしたけれども、当然のようにわれわれが負けた。試合の後で、私は即座に帰国を決意した。だが、それまでは本当にうまくいっていたんだ。リーグ戦はしっかりと組織されており、テレビでも中継されていた。アフリカのカップ戦も中立地(チュニジア)で戦うことができた」
リビア代表選手のほとんどは国外で活躍。
自国でのホームゲーム開催が不能となってからも、リビア代表のチーム力は落ちなかった。
2014年に南アフリカで開催されたCHAN(=アフリカネーションズチャンピオンシップ。アフリカ大陸の自国内のクラブに所属する選手のみに出場権が与えられた大陸選手権)に優勝したうえに、2018年のモロッコでの同大会でもベスト4に進出した。この4月にカメルーンでおこなわれる大会(註:コロナ禍により延期)にも当然ながら出場している。
他方、A代表も、CAN(アフリカネーションズカップ)2021予選と2022年ワールドカップ予選を戦っている最中であり、2012年以来のCAN本大会出場を目指している。主力が国外のクラブに移籍していることが、逆にチュニジア出身のファウジ・ベンザルティ監督の仕事をしやすくしている。経験豊富なベンザルティは、リビアを率いるのは今回が2度目で、6カ月の短期契約である。
「もちろん状況を考えれば簡単ではない」と、ベンザルティは本音を語る。
「主力となる優れた選手たちはバーレーンやエジプト、ポルトガル、マグレブ諸国などに散らばっていて、彼らにアルナスル・ベンガジの選手を3~4人加えると代表が出来上がる。チュニジアで合宿をおこなった後に、チュニジアかモロッコで試合をする。私は楽観的な性格だから、あまり心配はしていない。チームのレベルは高いからね」