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“スーペルピッポ”が指揮を執る、
ベネベントのセリエA復帰は幻か?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/05/02 11:40
ミランでの屈辱を経て数年、インザーギ監督とベネベントのセリエA復帰での臥薪嘗胆が果たせるときは来るのだろうか。
「ホームでは4点以上奪って勝つぞ」
全国リーグとして88年目を迎えたセリエB史上、最多得点ペースで突っ走るベネベントは、1977-78シーズンのアスコリをターゲットに定めた。20チーム制での最多勝点記録「87」も最多勝利数「25」も、レギュラーシーズン残り10試合で到達できる可能性が高い。
加えて、指揮官インザーギの視界には1982-83シーズンにミランが記録したチーム得点記録「77」も視界にある。
FWロベルト・インシーニェは、昨秋のペスカーラ遠征を強く覚えている。第9節のアウェーゲームで、ベネベントは0-4の屈辱的大敗を喫した。それが、ここまでリーグ戦唯一の黒星だ。
「遠征の帰りに、監督から言われた。『おまえたち、わかってるだろうな。うちのホームゲームでは絶対4ゴール以上奪って勝つぞ』ってね。これが勝者のメンタルかって思ったよ」
選手たちは奮い立ち、翌節以降、首位独走が始まった。
「昇格できないなんてありえない」
地元ファンも熱狂的に後押しした。本拠地「チロ・ビゴリート」には、前半戦だけでリーグ最多9万8999人がかけつけた。7805席という年間シート販売数は、ホームタウンの人口(6万人)を考えれば上出来だろう。
リーグ戦中断前の最後の試合となった第28節、ホームでの無観客試合にペスカーラを迎え撃ったベネベントは、前半戦の借りを返すように4ゴールを奪い、本当に意趣返しに成功した。FWインシーニェも1ゴール2アシストの活躍だった。
「だから、うちが昇格できないなんて、そんなのありえないよ」
昇格凍結ということにでもなれば、クラブのビゴリート会長は法廷闘争も辞さないだろう。セリエBにベネベントを止められるチームはもういないのだ。