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「なぜダフらなかったのか…」中山雅史の頭から離れない“幻のゴール”とは?【4戦連続ハットトリックから23年】
posted2021/04/29 11:04
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
Takuya Sugiyama
初出:「Sports Graphic Number 1001号」(2020年4月16日発売)<生涯一ストライカーの回想>中山雅史「今も追い続ける“幻のゴール”」(肩書等すべて当時)
Jリーグで157、代表で21ものゴールを積み上げても、なぜか忘れられないのはわずかの差で決めきれなかった1本だ。22年前の6月、快晴のナントのピッチで当時30歳のがむしゃらなストライカーに中田英寿から最高のパスが届いた――。
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生涯最高のゴールは、ない。
日本サッカー界を代表するストライカーだった中山雅史に――である。
いったい、どういうわけか。
「あれが決まっていたら生涯最高のゴールと言えたんですけどね。それが言えないから、ずっと追い求めることになったんですよ。現在に至るまで」
御年52歳。いまも現役だ。
一度はスパイクを脱いだが、2015年9月に現役復帰を表明。アスルクラロ沼津(J3)に在籍しながら、若者たちと一緒にボールを追いかけている。
それこそ、あの日、あの時、あの場所で決め損ねた「幻のゴール」を追い求めるかのように。
中山は、記録の人だ。
何しろ、ギネス記録を2つもつくった。1つはハットトリック(1試合3得点)の連続試合記録(1998年のJ1リーグで4戦連続)で、もう1つは国際試合におけるハットトリックの最短記録(3分15秒・2000年の日本対ブルネイ戦)だ。
前者の記録は2016年11月にステファン・ルチヤニッチに抜かれたものの、後者の記録は現在もなお破られていない。もっとも、本人に言わせればこうだ。
「キックオフから3分で3点取れたのに、それで打ち止め。ブルネイが点を取られたあと、速やかに試合を再開してくれたからこそ成立した記録ですよ」
1.33という1試合平均の得点率は驚異的
点取り屋の勲章とも言うべきJリーグの得点王は2回だが、うち1回は1シーズン最多得点記録。27試合に出場し、36得点を積み上げている。総得点の数もさることながら、1.33という1試合平均の得点率は驚異的なものだった。
J1リーグ通算157得点は歴代3位。2016年3月に佐藤寿人に抜かれるまでは、J1通算最多得点記録保持者だった。ちなみに、総得点の約7割が30歳を過ぎてからのものだ。
何しろJリーグ初得点は25歳のときである。筑波大からヤマハ発動機(ジュビロ磐田の前身)に加入したのが1990年。プロ化前夜のJSL時代を生き抜き、プロ化以降の日本サッカー界を引っ張る役回りを担うことになった。