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困難に打ち勝つ羽生結弦の向上心。
自身の理想像への挑戦は来季へ。

posted2020/04/03 15:00

 
困難に打ち勝つ羽生結弦の向上心。自身の理想像への挑戦は来季へ。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

四大陸選手権前のプログラム変更に衝撃が走るも見事優勝。男子としては史上初となるスーパースラムを達成した。

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph by

Asami Enomoto

 新型コロナウィルス感染拡大により、思わぬかたちでフィギュアスケートの2019-2020シーズンは急な終わりを告げた。しかし中途で終わったとはいっても、選手たちがそれぞれに挑んだ試みが色褪せることは決してない。それはこの人、羽生結弦もまた同じである。

 羽生結弦の今シーズンの出発点は、すでに昨シーズンにあったと言えるだろう。昨年3月、さいたまで開催された世界選手権を銀メダルで終えたあとに、羽生はこう語った。

「強くなりたいです。そのためにはもう、練習しかないです」

 大会を終えた瞬間、もう先へと目を向けていた。言うはやさしい。その通り行動できるかどうかに真価が表れる。羽生は言葉だけではないことを早々に示した。昨年のオフシーズン、5月から6月にかけて行われた「ファンタジー・オン・アイス」に出演したが、ショーを終えたあとにスケーターたちがジャンプを跳んでみせる恒例の「ジャンプ合戦」で、羽生は4回転ルッツに挑み続けた。

 そして幕張、仙台に続く3つめの開催地である神戸の公演最終日に、約2年ぶりに4回転ルッツを成功させた。その挑戦が「次」を見据えての取り組みであるのは明らかで、一時も無駄にせず向上を目指す羽生の強い意志を、あらためて思わせた。

ついに成功させた4回転ルッツ。

 その成果は、今シーズン発揮された。優勝こそならなかったが、昨年12月のトリノでのグランプリファイナルのフリーで、ついに4回転ルッツを投入し成功させたのである。

 そして続く四大陸選手権では、ショートプログラム、フリーともにプログラムを変更。平昌五輪シーズン以来となる、ショート『バラード第1番』、フリー『SEIMEI』を再演することを決意した。その経緯は、発売中のNumber PLUS 2019-2020シーズン総集編号でも記したが、やはり、羽生が向上心の塊であることを感じさせる決断だった。

【次ページ】 追われる立場か、追う立場か。

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