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羽生結弦の「バラード第1番」再演。
ピアニスト福間洸太朗が語る卓越度。
posted2020/04/04 11:30
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
昨季に引き続き今季もショート『秋によせて』、フリー『Origin』を演じてきた羽生結弦。それぞれ自身が憧れるジョニー・ウィアーとエフゲニー・プルシェンコへのオマージュを込めたプログラムであり、2人への尊敬の念を抱きながら取り組んできたが、完璧な一体感を得られぬまま、シーズン半ばにこんな思いを抱いた。
「僕のスケートじゃないのかな」
そして、昨年末に行われた「メダリスト・オン・アイス」で『SEIMEI』を演じたとき、羽生は「ものすごく自分でいられるなと思って。伝説として語り継がれるような記録を持ってしまっている子たちなので、できれば寝させてあげたかったんですけど、ものすごく自分でいられる」ことを実感する。
そこで「もう少しだけ、この子たちの力を借りてもいいのかな」と、あることを決断した。
それはシーズン終盤の異例のプログラム変更だった。
2月上旬、四大陸選手権から、平昌五輪で金メダルを獲得したプログラム、SP『バラード第1番』とフリー『SEIMEI』を再演することを発表したのだ。
福間は驚いたが、納得した。
発売中のNumber PLUS 2019-2020シーズン総集編号ではピアニストの福間洸太朗に、この再演された『バラード第1番』について語ってもらった。
2015年に行われた「Fantasy on Ice」で、羽生と『バラード第1番』でサプライズコラボレーションを披露した福間は、2016年の同アイスショーでも、羽生本人は怪我のため不在だったが、当時のSP世界最高得点を更新した2015年グランプリファイナルの映像に合わせて『バラード第1番』を演奏した。熱烈なスケートファンとしても知られている。
その福間も今回のプログラム変更には、「驚いた」という。ただ、「いちアスリートとして結果を求めるのは当然のことで、スーパースラムのかかったあの状況においては必然だったのだと思います」と羽生の判断が適切だったと感じていた。
'14-'15、'15-'16、'17-'18の3シーズン、羽生は『バラード第1番』を演じているが、その中でも福間は2季目のシーズン、2015年のグランプリファイナルの演技が特に印象に残っているという。