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困難に打ち勝つ羽生結弦の向上心。
自身の理想像への挑戦は来季へ。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2020/04/03 15:00
四大陸選手権前のプログラム変更に衝撃が走るも見事優勝。男子としては史上初となるスーパースラムを達成した。
自分と向き合う作業から逃げない。
ときに考えながら、絞りだすように語った言葉が伝えたのは、理想像を自身の中に思い描き、追い求める姿であり、戦う相手が自分にほかならないという事実だった。
超えていきたい、さらに成長して進んでいきたいと願う対象は自分自身だった。今も変わらぬ向上心の源が、そこにあった。
考えてみれば、自分と向き合う作業こそ、怖い。自分の弱さや課題を認め、克服しようとする行為は容易ではないし、往々にして、目をそむけたくなる。他者へと矛先を向けがちだ。しかし羽生は、逃げることなく、自分と向き合い、自分を超えていこうとしてきた。その結果が、今日の羽生を育んできた。
あらためてその営みの困難さと、実行してきた努力の深さを思わせたのがNHK杯での言葉であったし、今シーズンの試みであった。
世界選手権はなくとも。
今シーズンの集大成となる世界選手権という場はなくなった。でもこれまでの歩みと同様に、すでに目線は新たなシーズンへと向かっているはずだ。新型コロナウィルスの影響により、拠点であるクリケットクラブをはじめカナダのスケートリンクは閉鎖されている。そんな困難をも乗り越えようと取り組んでいるだろう。
新たなシーズンが始まったとき、どのような姿で氷上に向かうのか。楽しみにならざるを得ない今シーズンであった。
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