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伝説の86年W杯ブラジル対フランス。
ジーコ、プラティニとサッカーの美。 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph bySports Illustrated/Getty Images

posted2020/03/31 11:00

伝説の86年W杯ブラジル対フランス。ジーコ、プラティニとサッカーの美。<Number Web> photograph by Sports Illustrated/Getty Images

両チームの名手、ジーコとプラティニがPKを失敗する。そのドラマ性もまたこの一戦を美しくした。

両チームとも華麗な攻撃だった。

 プラティニとジレスがパスを交換し、プラティニからの戻しを右サイドバックのマヌエル・アモロスがシュート。これはわずかに外れたが、スタンドが大きくどよめいた。

 ブラジルも負けてはいない。ソクラテスとジュニオールが中盤を構成し、右のジョジマール、左のブランコの両SBがまるでウイングのように攻め上がってフランスのゴールを襲う。華麗であるのと同時に、見ていて背筋が寒くなるような迫力があった。

 ミューレルが、魔法のようなドリブルでマーカーを抜き去る。ジュニオールが左へ流したところをカレッカが右足で蹴り込み、ブラジルが先制する。

 そこからフランスが反撃する。右からのクロスが逆サイドに流れたところを、プラティニが左足で押し込んで同点としたのだ。

 後半も互いに攻め合って決定機を作るが、惜しくも決まらない。

ジーコのPK失敗、夢のような90分間。

 後半の中頃、ジーコが大歓声に送られてピッチに入る。その直後に中盤でパスを受けると、右足アウトサイドで絶妙のスルーパス。左サイドから斜め前へ走り込んできたブランコが追いついたところを、フランスのGKジョエル・バツが倒す。主審はブラジルにPKを与えた。

 キッカーはジーコ。右足から放たれたボールは向かってゴールのやや右へ飛んだが、バツが跳ね返す。悔しそうにうつむいたジーコを、プラティニが慰めた。

 その後はブラジルが優勢。ジュニオール、カレッカ、ソクラテスらが決定的なシュートを放つが、GKバツが立ちはだかった。

 90分間が終わって1-1の同点で、延長に突入した。この大会のここまでで、間違いなく最高の試合。「まるで夢でも見ているようだ。永遠に終わらないでほしい」と思っていたので、さらに30分間、夢の続きを見れるのが嬉しかった。

 延長でも、両者は果敢に攻め合った。

 延長後半、プラティニからのスルーパスを受けたFWブルーノ・ベローンヌが独走。それをブラジルのGKカルロスが飛び出し、突き倒す。明らかなファウルだったが、主審が見逃した。

 結局、試合は同点のまま終わり、勝負はPK戦に持ち込まれた。

 ブラジルは、1人目のソクラテスと5人目のCBジュリオ・セザールが外し、5人のうち3人が成功。フランスはエースのプラティニが外して頭を抱えたが、5人目のMFルイス・フェルナンデスが強烈に蹴り込み、準決勝進出を決めた。

【次ページ】 ゾーンプレス以前に生まれた美しさ。

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