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宇野昌磨&羽生結弦&鍵山優真。
今季最高の“神会見”を振り返る。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2020/03/28 20:00
会見場で視線を合わせながら笑顔で会話を交わす宇野(左)と羽生(中)。その2人を鍵山が眩しそうに見つめる。
羽生へのリスペクトを滲ませながら。
会見の冒頭、宇野は羽生へのリスペクトを滲ませながら、こう言った。
「僕はGPファイナルに出ることができなかったので、今大会に向けて長い時間、調整することができ、楽しく試合をすることができました。
やっと、2年前ぐらいの気持ちが戻ってきた。この2年間はつらい思いの方が多かったので、久々にうれしいです。スケートをやって来て良かったと思える試合でした」
4度目の優勝についてはこう表現している。
「今までで一番、達成感がありました。今シーズンはいろいろなことがあって、今までで一番つらいシーズンだったけど、スケートをあそこで諦めなくて良かったと思っています」
「自分らしくあればいい」と思いながらも……。
宇野は、GPシリーズフランス杯でどん底まで落ちたことが自身にとって転機になったとも打ち明けた。
「フランス杯のフリーでボロボロの演技をした時点で、自分が勝手に背負っていたものが下りました。今までの僕は、『自分らしくあればいい』と思いながらも『もっと強くなければいけない』と思っている時期がありました。
特に去年(2018年)なんかは本当にそう。それは、平昌五輪で思った以上の結果を出したことによって、自分へのプレッシャーを自分で大きくしてしまっていたからです」
宇野と羽生の2人が全日本にそろって出たのは4年ぶりだったが? という質問が出た。いろいろな想像力が働く質問である。宇野がマイクを持ち、切り出す。
「えー、まず、僕は羽生選手ほど自分に厳しくなることができません」
会見場が和む。羽生もかすかに笑みを浮かべて聞いている。
「僕は昨年、『ゆづくんみたいに強くなりたい』という思いで試合に臨むようになって、あらためてゆづくんのすごさを実感しました。『どうやって自分にプレッシャーをかけて、試合で良い演技を持ってくるのだろう。自分も強くなりたい』と思ったんです」