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宇野昌磨&羽生結弦&鍵山優真。
今季最高の“神会見”を振り返る。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2020/03/28 20:00
会見場で視線を合わせながら笑顔で会話を交わす宇野(左)と羽生(中)。その2人を鍵山が眩しそうに見つめる。
羽生が助け船を出して時間稼ぎを。
「昌磨1人に背負わせるのではなく、僕も一緒に背負って頑張っていけたらいいと思うので、頑張ろうね、おめでとう」
25歳の羽生。22歳の宇野。はるか彼方を走っていた先駆者と、その後ろ姿に追いつき、追い越そうとして汗を流してきた挑戦者。
2人はその場で沸き上がった感情を、会見を通してファンと共有した。
宇野が、「絶対に言いたかったことがあったのに、忘れてしまった」と苦笑いで困っていると、羽生が助け船を出して別の質問に答え、時間稼ぎをしてあげる場面もあった。
1度でいいから勝ってみたいという目標。
宇野が“絶対に”言いたかったのはこれである。
「羽生選手が出ていなかった全日本選手権で、僕が3度優勝したという言葉を聞いたときに、僕も『日本の誰もが僕が3度、日本一になったことに気づいていない』と思いました(笑)。
日本のスケートのレベルは高い。その中で優勝できたのはうれしいことではあるのですが、僕の中でも、日本中の人に『日本で1番上手いのはゆづくんだ』というのがあると思う」
「僕には、羽生選手と同じ立場で戦って、1度でいいから勝ってみたいという目標がありました。みなさんは五輪を思っているでしょう、僕にとっては、それがスケート人生の大きな1つの目標でした。
今回の結果は偶然がたくさんあるけれど、今シーズンの苦しい中で、スケートをやめずに、ちゃんとここまでやってこられたのが良い方に向いて良かったなと、すごくうれしく思います」
会見そのものが、作品のようだった。