フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
宇野昌磨&羽生結弦&鍵山優真。
今季最高の“神会見”を振り返る。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2020/03/28 20:00
会見場で視線を合わせながら笑顔で会話を交わす宇野(左)と羽生(中)。その2人を鍵山が眩しそうに見つめる。
スケートの楽しさを改めて知る。
しかし前述の通り、自分で重圧を懸けたことが裏目に出た。
「なかなか結果を出せなくなってしまって、今シーズンはいろいろあって、コーチの下も離れるようになって。自分の思っていた以上にその影響は強く、試合でもうまくいかず、練習でもうまくいかず」
羽生が真剣な顔で聞き入っている。その横で宇野はためらいなく言葉を継いでいく。
「僕にとってはつらい時期が続きました。でも、ステファンコーチの下で練習するようになって、スケートの楽しさを改めて知ることができました。
僕はゆづくんみたいに自分に厳しく、強くなることはできませんけれど、せっかくこういう舞台で戦えているからこそ、僕らしく、スケートを楽しみたい。
今の自分を楽しませてあげたい。今まで頑張ってきたからこそ、ご褒美をあげたい。そう思って練習や試合に挑んでいます」
今度は羽生が宇野について話し始める。
宇野が会見の席でここまで深く自己に向き合い、心の変遷を語るのを見たのは初めてだった。
言葉は金色の輝きを帯びているようであり、一方で泥臭い汗水から生み出されたからこその純な結晶のようでもあった。羽生の存在が引き出した本音でもあると感じられた。
宇野がマイクを置くと、今度は羽生が宇野について話し始める。宇野がフランス杯のキス&クライにたった1人で座り、涙を流していたことを、羽生も知っているようだった。
「僕自身もGPファイナルでコーチがいない状態になりましたから、それがどれだけ大変なことかを分かっています。
彼自身がコーチと離れるという決断をしたのも、その状態でGPシリーズに臨むという決断をしたのも、すごく勇気がいることだったと思います。僕は、彼がこうやってまた自分の道を見つけて、彼らしいスケートができていることが素直にうれしい」