濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
すべてを背負い、勝った“エース”。
K-1武尊が流した涙の重さ……。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2020/03/24 20:30
試合後のマイクアピールで涙した武尊。「見ている人たちにパワーを与えられたらと思って……」という一念だった。
「K-1最高!」から「格闘技最高!」へ。
その上でのKO勝ちであり、流した涙だった。武尊がモヤモヤをすべて吹き飛ばしたなどと言うつもりはない。彼がすべてのプレッシャーを背負い続けるべきだとも思えない。しかしK-1にこの男がいてくれてよかったとは思う。それは間違いない。
「周りからは“背負いすぎだよ”って言われるんですけど、責任感があるので。それをパワーに変えるしかない」
いつもは試合後のマイクを「K-1最高!」で締める武尊だが、今回は「格闘技最高!」と叫んだ。
「K-1が最高という気持ちは変わらないんですけど、今この状況だからこそ格闘技が人に与えられるパワーは凄いと思うんです。他のスポーツ、娯楽もありますけど、格闘技は痛みが伝わるから、苦しさを乗り越えて勝つっていうのが一番分かりやすく見える。そのパワーを格闘技界全体で伝えたい」
ファンへの感謝も忘れなかった。
「今回、無観客(試合)にしろっていう意見もあって。いろんな意見があると思います。ただ僕はお客さんの声援が力になる。気持ちが高まっていい試合ができるんです。だから(観客を入れての大会開催が)いい悪いは別にして、お客さんがいてくれてよかったっていうのが率直な気持ちです」
大会にまつわる誰の言葉よりも武尊の一言一言は重く、その姿は美しかった。心の底から尊敬する。