フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ネイサン・チェン「残念だが正しい」
世界フィギュア中止の“舞台裏”。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2020/03/12 17:30
昨年の世界選手権で抱き合う2位羽生結弦(右)と1位ネイサン・チェン。今年もこの2人のハイレベルな争いが見られるはずだったが……。
幻となった豪華メンバーの開会式。
ISUとカナダスケート連盟は、このモントリオール世界選手権のために多大な準備を重ねてきた。
その1つは「スケーティングアワーズ」という新しい試みである。
最も価値のあるスケーター、ベストコスチューム、もっともエンタテイメントなプログラム、ベスト新人、ベスト振付師、ベストコーチの6部門で、候補者の中からファンや報道関係者などがオンライン投票をし、その最終結果がこのモントリオールで発表される予定だった。
またカナダスケート連盟は、つい2日前の3月9日に大会の開会式ではバーチュー&モイア、パトリック・チャン、ケイトリン・オズモンド、エルビス・ストイコ、カート・ブラウニングなど過去のチャンピオンたちが総出演し、ジェフリー・バトル振付の演技を披露すると発表したばかりである。
この豪華メンバーの開会式も、幻のものになってしまった。
羽生の4アクセルもおあずけに。
だが何と言っても日本のファンにとって残念なのは、羽生結弦の『SEIMEI』が見られなくなったことではないだろうか。
今年の2月にSPはショパンの『バラード第1番』、フリーは『SEIMEI』に戻すと宣言した羽生。
シーズン最後の大きな勝負に向けて、自分の呼吸にもっとも合う作品に戻した羽生が、モントリオールの氷の上で果たして史上初となる4アクセルに挑戦するのかどうか、大きな注目がされていた。
だがそれも、しばらくおあずけとなってしまった。
チェンやベルが口にしたように、現在の新型コロナウイルスの状況を考えると、中止はやむを得ない。
選手や関係者、集まってくるファンたちの健康を守るためにも、正しい判断だったと言える。
現在のこの状況が一日でも早く落ち着いて、ノーマルな生活が戻ってくることを心から願っている。