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ネイサン・チェン「残念だが正しい」
世界フィギュア中止の“舞台裏”。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto

posted2020/03/12 17:30

ネイサン・チェン「残念だが正しい」世界フィギュア中止の“舞台裏”。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

昨年の世界選手権で抱き合う2位羽生結弦(右)と1位ネイサン・チェン。今年もこの2人のハイレベルな争いが見られるはずだったが……。

「世の中にはスポーツよりも大事なことはある」

 またマライア・ベルはこう付け加えた。

「私もネイサンにほぼ同意します。アスリートとしては、とても残念。でも世の中にはスポーツよりも大事なことはあり、まず人々をこのウイルスの感染の危険から守らなくてはなりません。

 私は今季はとても良いシーズンだったので、これから来季に向けて準備をしていくのを楽しみにしています」

延期開催はどのくらい現実的なのか。

 奇しくも9年前のこの日、日本は東日本大震災に襲われ、予定されていた2011年東京世界選手権は中止になった。

 代替地として急遽名乗りを上げた候補の中からモスクワが選ばれ、4月末になってから2011年世界選手権は開催された。

 今回はISUは、「現在のコロナウイルスパンデミックの先が見えない状況を考慮すると、通常4月初頭で終わるシーズンを数週間伸ばしたとしても、延期あるいは代替地などでの開催は現実的ではない」としている。

 延期開催を全く諦めたわけではないが、あったとしても今年の10月以降、とのことだ。

 だが10月といえば、もう2020/2021年シーズンのシニアGPシリーズが開始される直前になる。そんな時期に2020年世界選手権の開催をすることなど、現実的に可能なのか。

 しかも来シーズンはすでに2022年北京オリンピックの前年。2021年世界選手権は、各国のオリンピック枠がかかってくる重要な大会なのである。

 1シーズンに世界選手権を2度やることになったら、選手としてはどう思うのかと聞かれて、チェンはこう答えた。

「理想的だとは言えないですね。もしそうなったとするとすごく奇妙な状況になるとは思います。それでももちろんぼくたち選手は、できる限りの準備をしていきますが」

【次ページ】 幻となった豪華メンバーの開会式。

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