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引退シャラポワの「美学」とは。
専属日本人トレーナーが見た素顔。
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byYutaka Nakamura
posted2020/03/05 19:00
シャラポワを支えた中村豊コーチ。その生活ぶりには驚かされることが数多かったという。
引退して彼女の凄さを改めて実感。
「とにかく彼女は、全てにおいてプロフェッショナルでした。それはトレーニングや練習の時間だけでなく、カフェなどに行った時の、『これを食べること、つまむこと、飲むことが自分のパフォーマンスにプラスになるかどうか』の判断にも現れていました。
実際には、ケーキを一切れ食べたことで何かが変わる訳ではないけれど、その積み重ねで変わってくるし、甘えも出る。彼女はその判断を徹底してやり続けたし、我々にもそれを求めた。親しく接していた反面、求められるものも物凄く高かった。他のコーチたちと話していても、本当にやりがいがあったことを今更ながら思います。引退して彼女の凄さを改めて実感したし、だから涙も出たんです。
僕は指導者として、ここがスタンダードになってしまった。その中で気をつけていることは、シャラポワで成功したからといって、同じことを他の選手にやらせないということです。その選手の能力と存在感を認め、偉大なシャラポワから学んだことを心の中で咀嚼し伝えていく。ですから、第2のシャラポワを作ろうとは思っていないし、それ以上の選手を育てたいと思っています。
プロに徹するとは、なんなのか? その生き様を体現した代表的なひとりが、マリア・シャラポワであることは間違いありません」