猛牛のささやきBACK NUMBER
ラオウの意識改革は「コンパクトに」。
オリックス杉本裕太郎が磨く確実性。
posted2020/02/26 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
「今年のラオウはちゃいますよ」
キャンプ地・宮崎のSOKKENスタジアムでの紅白戦を終えたオリックスの杉本裕太郎は、帰りのタクシーに乗り込みながら、こう言ってほくそ笑んだ。
漫画「北斗の拳」の登場人物、ラオウを崇拝する杉本は、身長190cm体重102kgという体格や、規格外のパワー、豪快なスイングもあいまって、監督やスタッフ、チームメイト、そしてファンからも「ラオウ」と呼ばれている。
この日、2月21日に行われた紅白戦の7回、杉本はセンターへ豪快な2点本塁打を放った。その結果自体は珍しいことではない。本塁打は杉本の代名詞だ。違ったのは、その内容だった。
「あのホームランの打席は、初球のまっすぐに振り遅れていたんで、バットをちょっと短く持って、コンパクトに打ちにいきました」
バットを短く持った?
耳を疑った記者たちに、「らしくないでしょ?」と杉本は笑った。
小さいころからずっとホームラン。
子供の頃からずっと、杉本はホームランの魅力の虜だった。
「ホームランを打つのが楽しくて、野球を続けているようなものでした。特に小さい頃は。ホームランを打つ気持ちよさとか、楽しさがなかったら、たぶんここまで野球を続けていなかったと思います」
杉本は、小学1年生の時に野球を始めた。当時から周りの子供たちよりも体が大きく、ボールを飛ばすことに長けていた。中でもホームランは格別だった。
「気持ちよかったですね。それに、小学生の時って、地域の少年野球の大会でホームランを打ったら、ホームラン賞をもらえたんですよ。ノートとかお菓子とかなんですけど、そういうのでも嬉しかった。あと、ホームランを打ったら(両親に)遊戯王のカードを買ってもらえたんで、それもめっちゃ嬉しかったです(笑)」